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【特別座談会】トルシエ、ジーコ、オシムの通訳が語る「日本代表は本当に強くなったか?」

text by 加部究 photo by Editorial Staff

試合以外の時間のほうが通訳の役割は重要

鈴木國弘
鈴木國弘(すずき・くにひろ)。1955年生まれ。千葉県出身。19歳でブラジルに渡り、ポルトガル語を修得。以後、通訳またはコーディネーターとしてブラジルサッカーに携わる。1991年からは鹿島アントラーズで通訳を務め、2003年から2006年まではサッカー日本代表の通訳として監督のジーコを支えた。2013年12月に急性骨髄性白血病を発症したものの、懸命な治療により翌年社会復帰【写真:編集部】

トニー リネカーが話していたけれど、どうしてクライフが名監督だったかというと、40歳代になってタバコもスパスパ吸っていても、選手よりうまかったからだと。それと監督は、同じ言葉を話す選手を獲ろうとするよね。

 ヴェンゲルがアーセナルの監督になってからフランス人がドシドシ来る。外国人監督を雇うと、そういうメリットがある。ユルゲン・クロップが監督になれば、リバプール近郊で選手を獲るより、ドイツからもっと安く獲れるだろう、みたいな。英国の中で英国の選手は物凄く高いから。

ダバディ Jクラブもそういう選択肢がある。例えばボスニアから監督を呼んで、同じ旧ユーゴから選手を獲得すれば1人の通訳で回せる。クラブごとプチボスニアにする。

千田 大宮に旧ユーゴの選手が2人います。以前監督をしていたズデンコ・ベルデニック時代の北島雅陽通訳がそのまま残っています。

ダバディ 結局ミーティング等では通訳が必要ですが、ピッチに出てしまえば、それほど重要ではないのかもしれない。

千田 試合を行っている90分間より、残りの時間の方が通訳としては大切なのかもしれません。監督の生活の世話とか。試合以外でストレスを感じないようにしてあげるのも重要な仕事です。

ダバディ ハリルホジッチさんは、交代出場していく選手に30秒くらい話している。凄い情報量ですよね、僕だったら頭が痛くなる。

鈴木 ジーコの場合は、目線が選手だったので細かいことは言わなかった。あんなところでいろいろ言われたら集中なんかできない。そう思っていたから、極力話すのはロッカー内に止めていました。

ダバディ トルシエさんも、あまり交代の指示はなくて、山本(昌邦)さんがやっていました。だから逆にハリルホジッチさんにはびっくりしているんです。まだあまり信頼していないのかな…。

千田 1年間でようやく選手たちが監督をリスペクトし始めたような感じですね。あるいはスポーツ新聞の記者たちが、そうなのかもしれない。でもワールドカップ2次予選の最後の連戦で空気がだいぶ良くなったような気がしますね。相手が戦争をやっている国で最終予選の相手とはレベルが違いましたけど、少し上向きになったかな。

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