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日本代表 10年前

日本代表はW杯でどう戦うべきか? 武器と3つの弱点から見る“勝負のポイント”

text by 西部謙司 photo by Getty Images , Kazhito Yamada / Kaz Photography

弱点①:いまひとつの自陣での攻守

 固まっているので長所短所もあまり変わらない。ただ、アジア予選とW杯では対戦相手のレベルが違う。そこをアジャストできるかどうかが最後の詰めになるだろう。

 最大のポイントは、いかに相手のビルアップを制限できるか。

 前回大会までの戦術的な流れは、ビルドアップでありパスワークだった。それに最も長けたスペインが優勝し、オランダとドイツが続いている。4年後の今大会では、逆に相手のパスワークを封じる力が問われる。

 後方のビルドアップが進化し、多彩になっているのは世界的な流れだ。

 Jリーグでも、サンフレッチェ広島のフォーメーションを変えながら後方から組み立てていくやり方が効果を発揮し、それにともなって各クラブが対策を立てている。

 バイエルン・ミュンヘンはこの点で最先端のチームで、サイドバックを内側に上がらせる形を発明した。ボランチがセンターバックの間に下りる、攻撃的MFがボランチに下りる、サイドバックが攻撃的MFの位置へ上がる。この三点移動で相手の対応を後手に回らせ、ビルドアップを安定させている。

 さらには、右サイドバックのラームがボランチへスライドし、MFの1人(ミュラー)をトップに送り込む四点移動で攻撃の厚みを作るなど、より複雑で大胆なパターンまで駆使するようになった。

 W杯ではバイエルンほど思い切ったやり方のチームはないだろうが、それでもそれぞれに合ったビルドアップの方法を確立した国は増えている。自陣での攻守がいまひとつの日本にとっては、あまりうれしくない状況だ。

 理想はアジア勢とのゲームのように、敵陣に押し込んだままプレーすることだが、そう都合よくはいかない。相手にボールを持たれる時間はそれなりに長くなる。自陣に弱みを持つ日本にとって、ビルドアップの制限は死活問題といっていい。

 ただ、対戦相手の分析については日本の得意分野だ。イタリア人のザッケローニ監督にとっても手慣れた仕事だろう。短期間で守備組織を構築する能力について、日本は前回W杯やロンドン五輪などで適性を証明している。不向きな課題ではない。

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