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香川真司 10年前

危機という言葉すら優しい――。出口の見えないドルトムント。香川交代直後に暗転…総合力で王者に屈する

text by 本田千尋 photo by Getty Images

大転換点を逃したドルトムント。浮上のきっかけつかめず

 その直後のことだった。リベリからロッベンへのパスをスボティッチが身を挺してカットすると、こぼれたボールをレヴァンドフスキがゴール右隅に突き刺した。1-1。

 80分が過ぎる頃、バイエルンはドルトムントを押し込んでいた。そして、83分。ボックス内の左で突破するリベリを、スボティッチが倒してしまう。

 一度は奪いかけたボールは、リベリにとって絶好の位置へと転がった。気付けばスボティッチはイエローカードを提示されていた。ロッベンが確実に決める。1-2。ドルトムントは逆転での敗戦を喫した。

 試合後にペップが「選手達を誉め称えたい。ユルゲンのチームに対して勝利を収めることがどれだけ難しいか、私は知っている」と語ったように、バイエルンに対してドルトムントが一定の成果を上げたのは事実である。

 ペップの3バックに対して、クロップの戦略は機能し、1-0で前半を折り返した。その中に攻守両面において香川の貢献があったことも間違いない。

 1-0のまま勝利を収めることが出来ていたならば、大転換点となったところだった。フンメルスが欲した「自信」を手に、ドルトムントへの帰路に着くことが出来ただろう。しかし最後の20分間で全ては霧散してしまった。

 香川の交代によってチームバランスが崩れたと見ることも出来るが、それをクロップの失策とするのは酷である。チームバランスを維持しようとしたがための、香川に代えてグロスクロイツ、オバメヤンに代えてラモスの投入だった。

 ペップは勝負を賭けてリベリを投入した。指揮官の意気を汲んだリベリは、容赦なく攻め立てた。ドルトムントは止めることが出来なかった。最終的には、チームとしての総合力の差だったのである。

 1勝が遠い。出口は見えたかと思うと、遠ざかっていく。ドルトムントの現状を表すのに、危機という言葉すら優しい。

 順位は降格圏の16位となった。

【了】

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