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日本代表 9年前

無念の準優勝も、宮間あやが涙をこらえた理由。主将が背負う女子サッカーの未来

text by 藤江直人 photo by Getty Images

大儀見をつなぎ止めた言葉

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大儀見優季【写真:Getty Images】

 感覚派プレーヤーを自負する澤は、どちらかといえばプレーとその背中でチームをけん引する。それだけに控え選手たちの部屋を回っては積極的にコミュニケーションを取っていた宮間の存在は大きく、大会得点王とMVPを受賞した澤も「本当に助けられた」と感謝の思いを伝えていた。

 いまでは絶対的なエースストライカーとして君臨する大儀見優季(ヴォルフスブルク)も、宮間との深い絆で復活を果たしている。

 永里の旧姓で出場した前回のドイツ大会。ゴールを決める、という仕事に固執しすぎた大儀見は試合を重ねるごとにチームで浮いた存在となり、スウェーデン女子代表との準決勝からはスタメンを外れた。大会期間中には、ツイッターにこんな内容の短文も投稿している。

「我が道を貫いた結果として、代表から外れてもかまわない」

 一匹狼になりかけていた大儀見に対して、宮間はこんな言葉をかけ続けてチームにつなぎ止めている。

「永ちゃんはチームに必要だから、どこにもいかないで。永ちゃんらしくていいから。みんなもそう思っているから、永ちゃんもそのことを忘れないでね」

 1年後のロンドン五輪前。なでしこに不可欠な存在となった大儀見は、短い言葉のなかに宮間への感謝の思いを込めている。

「すべて変わりました。そうじゃなきゃ、この場所にはいないから」

 そのロンドン五輪で二度流した宮間の涙。フランス戦後のそれは五輪でまだ手にしていなかったメダルを確定させた安堵感であり、女子サッカー界ではW杯以上にグレードの高い五輪の決勝で再びアメリカと対峙できる高揚感が流させたものだった。

 アメリカとの決勝後に流したそれには悔しさと無念さが凝縮されていたことは冒頭でも触れたが、ならばバンクーバーの地で涙を必死にこらえていた姿は何を意味しているのか。

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