4失点目、それでも見せた笑顔
前回大会のリベンジを期すアメリカは、なでしこが持ち前の粘り強さを出す前にゴールを陥れるべく、予想もしない奇襲を仕掛けてきた。開始3分で獲得した最初のコーナーキック。MFミーガン・ラピノーは高いボールではなく、地をはうような低く速い弾道を右から蹴り込んできた。
虚を突かれ、反応が遅れたなでしこたちは、ペナルティーエリアの外側からトップスピードに乗って走り込んできたMFカーリー・ロイドをつかまえきれない。ロイドはDF岩清水梓(日テレ・ベレーザ)の眼前で左足をボールにヒットさせ、ゴール左隅へ流し込んだ。
2分後にもペナルティーエリアの右側で獲得したフリーキックを、低い弾道でゴール前に入れてくる。混乱していた守備陣は対応できず、こぼれ球を再びロイドに押し込まれてしまう。混乱は動揺と焦りを生み出し、前半14分、16分にもクリアミスやポジショニングのミスから失点を重ねた。
アメリカもなでしこの粘り強さを畏怖していたからこそ、キックオフからフルパワーを発揮して、完膚なきまでに叩き潰しにきたのだろう。戦略にはまってしまったなでしこだが、4失点目を喫した後に組んだ円陣で宮間は笑顔を見せていた。
チームメイトたちに平常心を取り戻させることともうひとつ、アメリカがさすがに通常の戦い方に戻す展開も織り込み済みだったのだろう。そうなれば、つけられている点差ほどの実力差はない。時間も十分に残っていることを、笑顔を介して伝えたかったはずだ。
アメリカの守護神ホープ・ソロの連続無失点記録を大会タイ記録となる540分間で途切れさせた前半27分の大儀見のゴールは、ハーフウェイライン付近から右サイドのMF川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ)へ通した宮間のロングパスが起点となった。
アメリカのオウンゴールとなった後半7分の2点目も、澤をターゲットにすえた宮間の正確無比なフリーキックが誘発している。直後に1点を返され、反撃ムードが萎えかけても、宮間は前半途中から回ったボランチの位置から左右両足を駆使して長短のパスをアメリカゴール前へ入れ続けた。