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アトレティコが見せた堅守速攻の真髄。バイエルンを破壊した“チョリスモ”が決勝への扉を開ける

text by 舩木渉 photo by Getty Images

走って、走って、走って、走る。しかし効果的に

ディエゴ・シメオネ
ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコはとにかくよく走るイメージがある【写真:Getty Images】

 ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコはとにかくよく走るイメージがある。それは正解だ。しかし数字には表れない。バイエルン戦のチーム合計走行距離は118.43km。単純にGKを除いた10人で割ると、1人あたり約11.8kmになる(一般的にGKも3~5kmほど走っているので実際にはもう少し低い数値になる)。

 実はこの数字、Jリーグとほぼ変わらない。今季のJ1全チームの平均走行距離は115.830kmで、平均してバイエルン戦のアトレティコよりもよく走る(数値が大きい)クラブは4つある(4月24日現在)。試合別で見るとチーム全員の合計走行距離が120kmを超えることは全く珍しくない。

 アトレティコがよく走って強烈なプレッシャーをかけているように見えるのは事実だが、数字がJリーグと変わらないのは効果的で無駄のない走りをしているからだろう。バイエルン戦のボール支配率はわずか31%だったことから、3分の2以上の時間守備をしていたことになるが、それでもバテて失点しなかったのが証明だ。

 またシメオネ監督のアトレティコにとってボール支配率とパス成功数は全く問題にならない。おそらく試合後にデータを確認もしないだろう。バイエルン戦でアトレティコが通したパスはわずか146本、成功率は66%だった。つまり1分間に平均1.6本ほどしかパスを通せていない計算になる。

 一方のバイエルンは631本のパスを通し、成功率は86%。ボール支配率も69%という高い数字を記録したが、試合には敗れた。これだけ見れば上に挙げたデータが“視覚的なものでしかない”ことがよくわかる。守備を徹底し、最小限の力でゴールを陥れる。これこそシメオネサッカーの真髄だ。

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