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アトレティコが見せた堅守速攻の真髄。バイエルンを破壊した“チョリスモ”が決勝への扉を開ける

text by 舩木渉 photo by Getty Images

英雄F・トーレスの活躍が決勝への扉を開ける

フェルナンド・トーレス
フェルナンド・トーレス【写真:Getty Images】

 もう1人のキーマンはF・トーレスだ。チェルシーやミランではボールを持ちたがるチーム戦術の影響もあって後ろ向きでパスを受けて味方を生かす不得意なプレーを強いられたが、アトレティコでは彼の良さが存分に生きる。

 リバプール時代、スティーブン・ジェラードとのコンビでゴールを量産していたF・トーレスは相手の最終ラインと巧みに駆け引きし、常に前向きでボールを受けることによってネットを揺らしてきた。攻撃で手数をかけずスピーディーな展開を求められるアトレティコではその能力と経験を生かすことができる。

 バイエルン戦の75分、カウンターに移ったアトレティコはグリーズマンが1人でボールを運び、パスを受けたF・トーレスがシュートで攻撃を完結させた。あまりに惜しい一撃で勝負を決められなかったのは痛いが、右サイドに開きながら相手DFと駆け引きし、ボールを受けるタイミングで角度を急に変えてゴールに迫る形はF・トーレスの十八番だ。

 長く苦しんだ負傷も癒え、トップフォームを取り戻した“英雄”は公式戦ここ7試合で5得点と復活を遂げたことはアトレティコにとって朗報でしかない。守備ではそこまで走っているように見えないが、的確な位置取りで相手の選択肢を限定し味方のカウンター攻撃に備える。第2戦でもF・トーレスの活躍が決勝進出のための鍵になることは間違いない。

 バイエルンは試合後、クラブ公式ツイッターに扉を何度開けても同じ扉が現れる画像を公開した。アトレティコ戦はまさにそんな、途方もない作業を繰り返していたようなゲームだった。1点差しかなく第2戦でひっくり返る可能性は十分にある。しかしシメオネ監督の戦術にこれだけ苦しむと、バイエルンは本拠地アリアンツ・アレーナに戻っても決勝への扉を開けられないかもしれない。

(文:舩木渉)

【了】

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