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Jリーグ 7年前

久保建英の早すぎたJデビューが持つ大きな危険性。無視すべきでない怪我のリスク、成長妨げる過剰報道

text by 舩木渉 photo by Dan Orlowitz , Getty Images

トップと練習したのが前日のみ。ピッチ内で齟齬も

久保建英
試合や練習以外にも久保が気持ちよくプレーに集中出来る環境を作れていただろうか【写真:Getty Images】

 久保の才能とバルセロナで培った技術の高さに疑いはないが、すぐにプロの舞台で通用する保証はない。それは日本だけでなくスペインでも同じで、バルセロナのカンテラ(下部組織)育ちが全員バルセロナのトップチームで活躍できているわけではないのがその証明だろう。

 U-16日本代表で活躍し、同世代の中ではトップクラスの実力であることはすでにわかっているのだから、我々は大人の事情で持てはやして騒ぐのではなく、久保が集中して自分自身を高められる環境を作る、そして彼の成長に真摯に向き合って対話していく必要があるのではないか。

 数多の若手をその目で見てきた橋本は言う。

「宇佐美や家長が出てきた時は遠藤(保仁)が周りにいて、プレーエリアや特徴を活かしてあげる状態を生み出した。今日はどうしても周りがそこまで余裕のある状態ではなかったと思うので、逆にいったら彼(久保)が引っ張らなければいけない状態だったかもしれない。それよりは周りのサポートがあって、彼がいいところでいいプレーができるシチュエーションを作ってあげる方が大事だと思う」

 これは試合のピッチ内での話だが、ピッチ外にも当てはまる。久保がJ3出場前にトップチームで練習したのは前日のみで、U-23チームだけでは練習していない。日頃から一緒にU-18でプレーする選手はまだしも、そうでない選手たちは久保の特徴を把握しきれていたとは思えない。

 実際に久保はかなり狭いスペースでボールを要求することもあったが、他の選手はミスを怖がってかなかなかパスを出そうとしなかった。おそらく久保は2つ先、あるいは3つ先まで見えて自分のプレーを決めている。

 例えば狭いスペースでパスを受けて一度リターンを入れ、その瞬間に別のスペースへ動き直してよりいい体勢でボールを受けなおし、そこからラストパスを狙う。周りに指示を出しながら、常にどうすればゴールに近づけるか考え、動き続ける久保の姿は目立っていた。しかし、周りがそのビジョンについていけておらず、なかなか噛み合わなかった。

 試合や練習以外にも久保が気持ちよくプレーに集中出来る環境を作れていただろうか。自分のために殺到するメディアを見て緊張しないはずがない。当然サッカー以外のことを意識してしまうだろう。

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