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Jリーグ 7年前

久保建英の早すぎたJデビューが持つ大きな危険性。無視すべきでない怪我のリスク、成長妨げる過剰報道

text by 舩木渉 photo by Dan Orlowitz , Getty Images

久保に必要なのは、成長に合わせた適切な環境

 いまの久保に必要なのはプロとしての経験ではなく、自分の成長に合ったレベルでの試合経験だ。そして周りのサポートで最高の環境を作ってあげることである。それはチームメイトだけでなく、クラブ、サポーター、メディアも含めて意識しなければならない。

 彼ほどの才能を安易な考えで潰してしまうのは日本サッカー界の損失以外の何物でもない。“スターシステム”と言われるような話題にしやすい選手を過度に持ち上げること、ビジネスとしてお金になるから露出させることなどありえない。

 村井満Jリーグチェアマンの「J3からJ1に上がっていく選手も結構いるので、彼(久保)をJ1の戦いの中で早く見たい」という発言は軽率に思える。この発言だけを額面通りに受け止めてしまえば、間違った決断を加速させかねない危険なものだ。

 W杯や欧州チャンピオンズリーグ出場経験を持つ長野のGKジョニー・レオーニと試合後に会話していて、彼が久保について話した言葉が強く印象に残っている。

「彼は今日よくやっていたと思う。15歳といったら本当に若いからね。ゴールはなかったけど、時間が短かった。素晴らしい左足を持っているし、努力し続けることが重要だ。いま進んでいる道を歩み続けること。まだ15歳だから、これから何が起こるかなんて誰にもわからない。

 非常に才能のある選手ということには間違いないよ。だってバルセロナでやっていたんだろう? 僕が初めてトップチームのベンチに入ったのは16歳のときだった。日本のJ1にあたるリーグでね。それからデビューしたのは17歳の時だ。サッカー界ではよくあることだし、未来に何が起きるかは誰にも何もわからないんだ」

 欧州のトップレベルで活躍した選手がいまは日本の3部リーグにいる。未来がどうなるかなど誰にもわからない。だが、周りの力で明るい未来の可能性を生み出すことはできる。久保の将来を豊かなものにするのは、周りのサポートと我々見る側の適切な環境づくりに他ならない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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