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Jリーグ 7年前

松本山雅・飯田真輝が辿った成長の軌跡。“都落ち”からの飛躍。PO敗退も物語は第二章へ【The Turning Point】

前後編にわたってお送りした飯田真輝(松本山雅FC)のインタビュー。J2クライマックス、臨界点に達するのを待ち構えていた当付録コラムだが、11月27日のアルウィンに訪れたのは招かざる黒の使者だった。飯田と松本山雅の物語は第二章へと続く。(取材・文:海江田哲朗)

シリーズ:The Turning Point text by 海江田哲朗 photo by Getty Images

「ああ、イイちゃんね。ガンダム飯田」

トレーニングに臨んでいる松本山雅FCのDF飯田真輝
トレーニングに臨んでいる松本山雅FCのDF飯田真輝【写真:海江田哲朗】

【インタビューはこちらから】

 松本山雅FCの練習拠点、美ケ原温泉の一角にあるかりがねサッカー場。9月下旬、初めてここを訪れた私は、カメラを首からぶら下げ、周辺を歩き回っていた。

 静かな場所だ。遠くに望むのは北アルプスの山々。野鳥の鳴き声が辺りに響く。

 メディア用のビブスを着ていたせいだろう。おっちゃんに呼び止められた。「どなたですか?」と。私は、飯田真輝に話を聞きに来たのだと話した。

「ああ、イイちゃんね。ガンダム飯田」

 おっちゃんは満足そうに言って、立ち去った。いまのはなんだったんだろう。あちこちのクラブの練習場に出入りしてきたが、そんなふうに話しかけられるのは初めてだった。

 がっしりした体つきに由来する、ガンダムの愛称。どうやらそれは松本山雅でも健在らしい。飯田にインタビューした際、私はその話を持ち出した。

「たぶん、あの人だな。ふだん見ない顔がいると、すぐに話しかける。どうもね、相手のことを確認したいみたいで。悪気は全然ないんですよ」

 飯田は可笑しそうに話した。ただそれだけのことなのだが、飯田と松本山雅の関係性、ここで築き上げてきたもの、サポーターとの距離感が伝わってきた。

 2010シーズンの途中、飯田は東京ヴェルディから松本に移籍した。敢えて言う。都落ち同然だった。その頃から松本山雅はやたらとアツいサポーターに支えられるクラブと一部で知られていたが、当時は地域リーグからJFLに昇格したばかり。ぽっと出にも満たない、ただし豊かな可能性を示すクラブのひとつに過ぎなかった。

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