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Jリーグ 7年前

盟友と父親が見たカズの雄姿。北澤、武田らが感服、50歳Jリーガーの存在価値

text by 藤江直人 photo by Getty Images

一般社会で50歳と言えば、年金のことを考え始める世代

現在は日本サッカー協会の理事も務める北澤豪さん
現在は日本サッカー協会の理事も務める北澤豪さん【写真:Getty Images】

 その三ツ沢に北澤さんが到着したのは、先発出場を果たしたカズがキックオフと同時にJリーグの最年長出場記録を「50歳と0日」に更新し、後半20分にFW津田知宏との交代でベンチへ退いた後だった。もちろん、晴れ姿を見られなかったのには理由がある。

「こういう日だし、僕も一生懸命に向き合えばと思って」

 同じ日の午前中に号砲を迎えた東京国際マラソン2017に、北澤さんは出場していた。自らに課した目標は初めての4時間切り。一人の市民ランナーとして己の限界に挑んだ結果、3時間52分31秒でゴール。自己記録を17分近く更新する快走だった。

「じゃないと(4時間を切らないと)ここに間に合わない、というのもあったからね。途中の品川から、こっちに抜けて来ようかなと思ったけど」

 無邪気に笑った北澤さんは、カズがオフの恒例としているグアムでの自主トレに参加。48歳の体をいじめ抜き、カズから刺激と情熱を分けてもらいながら4時間切りできる体を作りあげた。目標を成就させたいまだからこそ、サッカー界を超越して、同じ世代の人々へ自分自身が受けた思いを投影させる。

「一般社会において、50歳と言えばそろそろ年金のことを考える世代じゃないですか。そこへ『僕たち、私たちももうちょっと頑張ってみようか』と思わせるメッセージにもなると思うんです。スポーツの世界だけで話題が回らない。カズさんだからこそ、できることですよね」

 カズが毎オフに行っているグアムでの自主トレは、一日に3度の練習を課すなど、苛酷なメニューを組んでいることでも有名だ。現代サッカーでは、前線からの守備もフォワードに求められる。90分間を通してプレスをかけ続けられる体力を目標に掲げるカズが、自身の原点をも見つめていたと北澤さんは明かす。

「ドリブルへのチャレンジをしたいと。いまのサッカーのトレンドはシンプルにポンポンとはたくので、これまでのグアムではボールをもつメニューは少なかった。でも、今年のグアムは違った。サッカーのトレンドに合わせながらも、ボールを動かすだけではダメだと、本気で考えているんだなと思いましたね」

 ドリブルやまたぎフェイントはカズの原点でもあり、代名詞でもある。守備面で奮闘する時間帯が多かった松本山雅戦では披露する機会は訪れなかったが、決して向上心を忘れない姿勢があるからこそ、先発の機会を勝ち取っていけるのだろう。

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