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Jリーグ 7年前

齋藤学“無双”の裏で見えた新生マリノスの課題。若きトリコロールが秘める無限の可能性

text by 藤江直人 photo by Getty Images

違いを生み出す新旧のトップ下。変化の象徴に

ダビド・バブンスキー
ダビド・バブンスキー(左)が中村俊輔(右)なき後のトップ下で躍動している【写真:Getty Images】

 相手ボールのときは「4‐4‐2」となり、最前線の2人を「一の矢」として執拗なプレスをかける。マイボールに転じると「4‐3‐3」へと変わり、左右に開いたウインガー、齋藤とマルティノスのスピードと突破力を生かしてチーム全体を前へ押し出していく。

 昨季中盤以降から形を成しはじめていた、ピッチを左右に大きく使ったカウンターが、今季はさらに切れ味を増している。マリノスに新たな力を加えた存在として真っ先に名前を挙げられるのが、マケドニア代表にも選出されているバブンスキーである。

 2トップの一角としてプレスの「一の矢」を担い、攻撃時には主戦場であるトップ下に戻る。相手守備網の隙間を巧みに見つけ出してボールを受けては、ストロングポイントでもある左右のウインガーを走らせるパスを通し、自らも積極的にゴールを狙う。

 1990年代の中ごろにガンバ大阪でプレーしたDFボバン・バブンスキーを父にもつ23歳は、幼少期を日本で過ごし、外国人選手ではJリーグ史上初となる「親子ゴール」を達成。豊富な運動量で多くのパスコースも作り出すなど、マリノスで確固たる居場所を築きつつある。

 昨季までは、マリノスのトップ下と言えば俊輔だった。代名詞でもある「黄金の左足」から繰り出されるスルーパスや、Jリーグ記録を更新中の直接フリーキックからのゴールは何度もファンやサポーターを酔わせ、チームを勝利に導いてきた。

 いま現在でも「違い」を生み出すことはできる。もっとも、38歳という年齢を考えれば、それを継続的に求めるのはどうしても厳しくなる。昨季の2ndステージはけがもあって、わずか4試合、228分間の出場にとどまっていた。

 日本代表で「10番」を背負った系譜に俊輔とともに名前を連ね、いまはジュビロ磐田を率いる名波浩監督も、俊輔の技術や存在感を称賛したうえでこうもつけ加えている。

「球際(の強さ)とか、空中戦ももちろんですけど、そういうところを求めるのは酷ですけど」

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