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『信念』の男、シメオネを知るための10章。選手を戦士に。溢れんばかりのエネルギー【編集部フォーカス】

シリーズ:編集部フォーカス text by 編集部 photo by Getty Images

「挑発は競技の一要素」。シメオネ、ベッカムとの騒動を振り返る

Simeone

1998年ワールドカップ当時のシメオネ、ベッカム【写真:Getty Images】

 シメオネは現役時代、世界各国の名クラブでプレーしアルゼンチン代表として3度のW杯を経験している。彼のアルゼンチン代表としてのキャリアの中で特に話題となったのは、元イングランド代表のデイビッド・ベッカムとの騒動ではないだろうか。

 ベッカムは1998年に開催されたフランス・ワールドカップの決勝トーナメント1回戦、アルゼンチン対イングランドにおいて、シメオネによって退場に追い込まれた。シメオネからタックルを受け倒されたベッカムは、倒された状態のままシメオネの足を軽く蹴りシメオネを倒したのだ。それを見ていた主審のニールセンは、ベッカムにレッドカードを提示した。

 シメオネは『信念』で「挑発は明らかに競技の一要素である。挑発について言えるのは、自分たちが利を得る相手の行動を生じさせるということだ」と語っている。

 玉乃氏はこれに対し「挑発もサッカーの一部だということを、完璧にシメオネ監督はこの時、いやおそらく5歳の時から理解していたのでは」とし、「ベッカムはそれを多分十何歳の時に気づいたんでしょうけれども、シメオネの方が早かった(笑)」と倉敷氏も同調した。

 シメオネはこの試合で、「一つの状況を生かして利益を得た(『信念』より引用)」に過ぎない。この一件は、28歳のシメオネが、当時23歳だった若きベッカムより何枚も上手だったことを証明した瞬間だった。

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