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中村俊輔のキックが楽しみな理由。一流が持つ独自の『感性』…育成指導者よ、教えすぎるな【宮澤ミシェルの独り言】

シリーズ:宮澤ミシェルの独り言 text by 青木務 photo by Junichi Ebisawa , Getty Images

「こだわりを持った選手がどんどん出てきてほしい」

 小野伸二なんか、ゲームに必要のないことをいっぱいできるわけ。超人的に。オランダに行った時、飛んでくるボールを走りながらアウトサイドでピタッと止めただけで、スタジアムがすごく沸いた。乾(貴士)もそう。もちろんドリブルで抜いていくプレーも素晴らしいけど、サイドチェンジのボールをピタッと止める。あれにエイバルのファンは「こいつ上手いな」ってなる。そこからのドリブルだからね。

 自分で考えて試行錯誤する力を養わないと。もちろん、指導者にも感性がないといけない。それは日本サッカー界も気づいているし、もう少し選手に考えさせなきゃダメだなという指導法になってきている。

「コイツは本当にスルーパスが好きなんだな」とか、こちらとしては何か見たいよね。乾だって、あのトラップの技術や切り返し、そういう武器があるからこそスペインでやれている。他の日本人にできないことはないと思う。乾は野洲高校などで鍛えた技術がJリーグで通用して、ドイツでも上手くいって、スペインでもハマった。日本人にできないことを彼は一切やっていない。でも他の日本人があの領域に入っていけないのは、そういう環境がないからとも言える。

 久保にも、バルサの環境でやってきた経験がある。頭もいいし、どういう“サッカー感”で今後やっていくのか楽しみ。スピードを上げるための練習や、判断を磨くための練習はやってほしいけど、教えすぎる必要はないよ。

 歴代スーパースターはみんなそうだよ。ロナウジーニョや(リオネル・)メッシみたいな選手がすぐには日本に出てこない。(ズラタン・)イブラヒモビッチ、(ルイス・)スアレス、あいつら一体何なんだよと(笑)。でも、日本に点取り屋が増えないのもわかるよね。他とは違う特別な感覚が研ぎ澄まされないんだから。教わったことだけでは点は取れない。

 岡崎(慎司)はプロに入って最初の頃はチーム内の序列が低かった。でも、岡崎には他の選手に真似できないものが間違いなくある。自分を磨いてドイツに行って、プレミアでは優勝して。日本人が持っているマニュアル以外のものが彼にはあるから。ここを突っ込んで行くのかよ、というところで迷わず行く姿勢なんかがそうだよね。

 こだわりを持った選手がどんどん出てきてほしい。頑張るのは当たり前で、その上で何ができるか。それが“サッカー感”だし、教えられているだけで身につけるのは難しい。大人のゲームの中で最低限必要なものは間違いなくあるけど、みんな一緒じゃダメ。

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