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日本代表 6年前

誰からも愛される男、本田圭佑。イメージと異なる実像。その精神力が日本にもたらしたもの【ロシアW杯】

text by 元川悦子 photo by Getty Images

1トップ、トップ下、スーパーサブ…職人肌の「エース」

「究極論、プロになるのも、ヨーロッパ移籍するのも、僕はホントにワールドカップのためにやってきたから」と本人も語気を強める。日本が98年フランス大会でワールドカップ初出場を果たしてから20年。中田英寿や中村俊輔、遠藤保仁らを筆頭に日本をけん引してきた看板選手はこれまでもいたが、本田は先人たちをはるかに超える実績と影響力をもたらしてきたと言っていいのではないだろうか。

 まず、2010年南アフリカ、2014年ブラジル、そして今回の3大会で4ゴール・3アシストという記録は突出している。得点の方は対アフリカ勢3大会連続というおまけ付きで、アシストも3大会連続。今回のベルギー戦ではその一発が出ず、日本の新たな歴史の創造者になることはできなかったが、どれだけ本田圭佑が勝負強い男かを我々は痛感させられ続けてきた。

「ホントに日本人が想像できひんような努力をして、この場にいるということをしっかり見てほしい」と6月24日のセネガル戦で一刺しを決めた後、彼は厳しい表情で語ったが、本当に凄まじい集中力と闘争心でここまでやってきたからこそ、偉大な記録を叩き出すことができた。その厳然たる事実には改めてリスペクトを払うべきだろう。

 南アでは1トップ、ブラジルではトップ下、そしてロシアではトップ下と右サイドという幅広いポジションでプレーし、今回はジョーカーという難しい役割をも受け入れてこなしたマルチな能力も特筆に値する。

「エース」と呼ばれる人間は点取り屋かゲームメーカーとして君臨する傾向が強く、過去の日本のエースたちもそうだった。が、本田はどんな仕事でも受け入れ、その役割の中で自分の持つマックスの力を発揮する。そういう職人魂を持った選手なのだ。

 今回のスーパーサブ的な仕事は、28日のポーランド戦に象徴される通り、出番が訪れることなく終わってしまう可能性もゼロではない。同じく南アからの盟友である長友佑都が全試合フル出場するのを間近で見れば、複雑な思いも湧いてくるだろう。それでも本田はベンチで仲間を盛り上げ、チーム全体を鼓舞できる。

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