「次は8年後を待たずベスト8へ」
今回の最終登録メンバーに入れなかった23歳の浅野拓磨、21歳の井手口陽介らに加え、1997年生まれ以降の東京五輪世代の引き上げも図らなければ、せっかく生まれた前向きなムードもすぐに消えてしまいかねない。日本サッカー界はロシアワールドカップのベスト16入りで喜んではいられないのだ。
「2002年、2010年に続いて、日本は8年周期でベスト16を戦ったが、次は8年後を待たなくていい状態でベスト8に行けるのではないか。そういう3度目のチャレンジができたと思っている。今回で8年周期が変わるのではないかとも感じます」
西野監督は4年周期で毎回のように決勝トーナメントに進める布石を打ったつもりのようだが、欧州トップクラブで戦い抜いてきた長谷部、本田らがいなくなるマイナス影響は少なくない。現在の若手は彼らが20代前半だった頃に比べると世界を駆け上がっていく勢いがやや足りない。ここから一気に急成長していく人間が何人も出てくれば問題ないが、果たして近未来の日本代表はどうなるのか。そこを関係者が一丸となって考えていくべきだろう。
「本当のワールドカップはトップの世界。スタンダードは(ベルギーが本気モードになった)30分間だと思う。あの30分間でベルギーは我々に対してむき出しになってかかってきた。そういう中でどう対等に戦えるかが大事。今回は戦いきれなかったが、それを体感したことが財産になる」とも西野監督はコメントしたが、そういうトップの本気を4年に一度、ワールドカップで感じているだけでは日本は世界に追いつけない。
代表レベルだけでなく、選手個々が日常的にUEFAチャンピオンズリーグなどで場数を踏み、独特の緊張感や重圧に慣れないといけない。イングランド・プレミアリーグで充実した時間を過ごしてきた吉田が劇的な進化を遂げた通り、やはり重要なのは日々のプレー環境だ。だからこそ、海外に出ていく若手がもっと増えなければいけないし、Jリーグのレベルも引き上げなければいけない。
ロシアでの4試合で直面した数々の課題にどう向き合っていくか。それが日本サッカーの今後に大きく影響する。新時代に突入する日本代表がこれまで以上の右肩上がりの軌跡を描けるように、長谷部や本田らが残した財産を若い選手たちがしっかりと受け継ぎ、強い自覚を持って戦っていくこと。まずはそういうところから新たな一歩を踏み出してほしい。
(取材・文:元川悦子【カザン】)
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