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Jリーグ 5年前

中村俊輔を奮い立たせた「師匠」からの電話。41歳来季も現役、稀代の名手が誓う完全復活

text by 藤江直人 photo by Getty Images

長引く負傷。酷使してきた右足首はボロボロで…

 だからこそ、俊輔の真意を確かめたかった。ヴェルディを2-0で危なげなく下し、J1残留を決めた直後のヤマハスタジアム内の取材エリア。上下黒のチームジャージを身にまとい、誰よりも早く姿を現した俊輔は、一時は「引退」の2文字が脳裏をかすめていたことを自ら明らかにしている。

「手術したとはいえ、今年はこれだけ長くかかりすぎて自分でもびっくりしたし、ちょっと落胆してメンタルが揺らいだりもした。そろそろ引退みたいなものもチラチラと見えてくるのも、こんな感じなのかなと」

 今季は開幕前から、右足首に巣食った古傷とも戦ってきた。軸足の右足首に走る痛みをかばいがちになるがゆえに、利き足の黄金の左足にも不必要な負荷がかかる。3月に左大腿二頭筋を、4月には左ヒラメ筋にそれぞれ肉離れを起こし、戦線離脱を余儀なくされてきた。

 迎えた6月11日。ロシアワールドカップの開催に伴い、J1が中断期間に入ったことを受けて、故障禍の原因となってきた右足首にメスが入れられた。診断の結果は「右足関節前方インピンジメント症候群及び滑膜炎」で、練習に合流できるまでに6週間前後を要するとされた。

 しかし、不安は取り除いたはずだったが、リーグ戦への復帰は9月1日の名古屋グランパス戦までずれ込んだ。しかも、8位とまずまずの順位で折り返したジュビロは、7月18日の中断開けから4試合連続のドローを喫する。この時点で名波浩監督は、残留争いに巻き込まれることを覚悟した。

「16位というものを見ながら、戦わなければいけない状況だった。最悪のことを想定して、メンバー構成なり戦術を組んできたつもりです」

 しかも、俊輔の復帰後も状況は好転しない。それどころか名古屋に1-6、清水エスパルスには1-5の大敗を喫するなど、1つの白星もあげられないまま再び戦線離脱を強いられた。台風で延期になっていた湘南ベルマーレ戦を2日後に控えた、10月28日の練習中にまたもや肉離れを負った。

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