横浜F・マリノスが哲学から導き出した回答。新システムが持つ特徴とは?【西部謙司のJリーグピンポイントクロス】

明治安田生命J1リーグ、名古屋グランパス対横浜F・マリノスが9日に行われ、2-1で名古屋が逆転勝利を収めた。1分に敵陣でのボール奪取から先制ゴールを奪ったのは横浜FM。今回は、この試合で採用した新布陣がどのような特徴を持ち、どのように機能していたのかを掘り下げる。(文:西部謙司)

2020年09月11日(Fri)9時58分配信

シリーズ:西部謙司のJリーグピンポイントクロス
text by 西部謙司 photo Shinya Tanaka
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懐かしのバルセロナ方式

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【写真:田中伸弥】

 第15節の名古屋グランパス戦、横浜F・マリノスはフォーメーションを変えて臨んでいた。それまでの4-2-1-3から、3-3-3-1ともいうべき布陣である。

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 前節の川崎フロンターレ戦は1-3。ハイプレスを外されると、高いディフェンスラインの裏を狙われやすい。その弱点を川崎につかれた。しかし、アンジェ・ポステコグルー監督はラインを下げる選択はせず、逆にDFの数を減らしてプレッシングを強めるほうへ舵を切った。

 横浜FMの先制点は狙いどおりだろう。ジュニオール・サントスのプレスでボールを奪うと、前田大然の突破、仲川輝人を経由して最後はジュニオール・サントスが決めた。

 3-3-3-1を縦だけでなく横方向にもコンパクトにして、前方からプレスをかけ続ける。ボール周辺は密になり、試合のテンポは上がっていった。

 3-3-3-1のフォーメーションは、Jリーグではかなり珍しいが初めてではない。おそらく最初のケースは横浜フリューゲルスだろう。

 1998年、カルレス・レシャック監督がこのフォーメーションを採用していた。レシャックはドリームチームと呼ばれたバルセロナのコーチとして有名だった。ヨハン・クライフ監督とレシャックのコンビが率いたバルサが3-3-3-1でプレーしていて、レシャックはそのまま横浜フリューゲルスにそれを持ってきたわけだ。

 このシステムは「ラインの数」が多い。CB、アンカー、トップ下、CFと中央の縦軸に4人がいる。そして、その中間に左右に選手が配置されている。攻撃時には縦に菱形が3つ並ぶ形になり、ラインは全部で7本ある。ラインといっても中央は1人ずつしかいないのだが、パスコースを作りやすいのが1つの特徴だ。

 どこに縦パスを出しても、ラインをスキップしたことになるので、縦パスを落とす場所も常にある。縦パスを入れて1つ下げ、さらに縦へという展開をしやすい。ボール支配とともに縦への推進力も得やすい。

 レシャック監督のバルセロナ方式で、横浜フリューゲルスは急にパスが回るようになった。ただ、攻撃的すぎて守備が脆く、レシャックはセカンドステージ第8節で成績不振によって辞任している。

哲学から導く答え

 レシャック監督は、ほとんど攻撃の話しかしなかったそうだ。攻撃に注力していたのは確かだが、3-3-3-1のもう1つの特徴は前進守備でありハイプレスである。

 横浜FMのように縦横にコンパクトにすれば、前からスペースを埋めきってしまうには向いている。もちろん、プレスを外されてひっくり返されれば、DF3人で広いスペースをカバーしなければならない。しかし、引くぐらいなら、より前に出て守るのがポステコグルー監督の考え方なのだ。いわゆるサッカー哲学に関わるところといえる。

 なぜサッカーをするのか、サッカーとは何か、どうあるべきか。そこを詰めている監督は基本的にブレない。何か問題があるときの回答もそこから出てくる。上手くいくかどうかはともかく、全然別なものは出てこないのだ。

 横浜FMの新システムは前半については機能していたと思う。ただし、完全にではない。パスワークのテンポは上がり、縦パスも多くなったが、ワンタッチが連続する中でミスも多くなった。名古屋の縦パスに対する守備が良かったということもある。守備で狭くしているぶん攻撃も狭くなり、マルコス・ジュニオールはいつもほどスペースを見いだせずプレーしにくそうに見えた。

 結局、横浜FMはゲームを支配しきるところまではいかず、そうであればこのシステムは失敗といっていい。名古屋に2ゴールを返されての逆転負けを喫した。ただ、横浜FMがマイ・ウェイで現状を打破しようとした強気の試みは面白かった。プレーだけでなく、そういう回答を出してくることそのものが面白い。

(文:西部謙司)

【了】

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