清水エスパルスの新エース、チアゴ・サンタナのすごさとは? すでに漂う得点量産の予感【コラム】

今季から清水エスパルスでプレーしているブラジル人FWチアゴ・サンタナに、ブレイクの気配が漂っている。リーグ戦開幕から2試合に出場して1得点だが、すでに前線の核にふさわしい存在感を発揮。ストライカーとして非常に高い能力の持ち主であることは間違いなさそうだ。(取材・文:舩木渉)

2021年03月07日(Sun)14時16分配信

シリーズ:コラム
text by 舩木渉 photo Getty Images
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新エースがやってきた

チアゴ・サンタナ
【写真:Getty Images】

 今季からミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任し、大型補強も敢行した清水エスパルスにポジティブな雰囲気が漂っている。

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 6日に行われた明治安田生命J1リーグ第2節のアビスパ福岡戦は2-2のドローに終わったが、終盤に直接フリーキックから失点するまで14年ぶりの開幕2連勝に迫っていた。16位と低迷していた昨季の状況を考えれば、結果のみならず試合内容の面でも大きな進歩があったのは明らかだ。

 東京ヴェルディやセレッソ大阪で好成績を収めてきたスペイン人指揮官は、アシスタントコーチのイバン・パランコとともに、清水にも明確な戦術コンセプトを持ち込んだ。「あるときは4-3-3、あるときには4-4-2」という可変システムに、新加入選手たちも順調にフィットしているように見える。

 中でも選手配置の変化にあまり影響を受けず最前線に君臨するFWチアゴ・サンタナは、早くも攻撃の核になりそうなポテンシャルを随所に発揮。J1開幕戦ではロティーナ監督が「失点した後、我々ががすぐに同点に追いついた。それが試合の鍵だったと思う」と語った貴重な同点ゴールを奪い、清水を1-3という逆転勝利に導いた。

 翌週半ばにアウェイで行われたYBCルヴァンカップのサンフレッチェ広島戦はベンチ外だったものの、6日の福岡戦は休息十分で元気に先発フル出場。リーグ戦2試合連続ゴールとはならなかったが、攻撃の起点にもフィニッシュ役にもなる万能ぶりを遺憾なく発揮した。

 ここで清水の新たなエースストライカーが日本にやってくるまでの足跡を振り返ってみたい。

 チアゴ・サントス・サンタナは1993年2月4日に、ブラジル北部のバイーア州セリーニャという小さな街で生まれた。ユース時代はサン・カルロスというサンパウロ州内陸部の小さなクラブで過ごし、2011年夏から2年半ほど南部の名門インテルナシオナルの下部組織に期限付き移籍。その後、2014年にカイシャスというブラジル全国選手権3部(セリエC)のクラブでプロデビューを果たした。

ポルトガルで開花した得点能力

 当時21歳だったチアゴ・サンタナはセリエCで16試合に出場し4得点という成績を残し、2015年にブラジル全国選手権1部(セリエA)へステップアップ。サンタカタリーナ州選手権1部で15試合出場10得点、セリエAで25試合出場4得点と一定の成果を残した。

 ちなみに当時のチームメイトには現鹿島アントラーズのFWエヴェラウドや、現町田ゼルビアのFWドゥドゥ、湘南ベルマーレとアルビレックス新潟でもプレーしたGKアレックス・ムラーリャらがいた。

 2016年は前半をナウチコで過ごし、夏にサン・カルロスからの期限付き移籍で海外へ飛び出す。欧州で最初に在籍したのが、当時ポルトガル1部にいたヴィトーリア・セトゥーバルだった。しかし、欧州トップリーグの壁は厚く、リーグ戦18試合出場無得点と目立った結果は残せなかった。

 すると2017/18シーズンはサン・カルロスに籍を置いたまま、当時ポルトガル2部が定位置だったサンタ・クララへ期限付き移籍。ここでチアゴ・サンタナの秘められていた得点力が開花し、リーグ戦33試合出場で15得点をマーク。クラブを2位で15年ぶりの1部リーグ昇格に導いた。

 エースとして期待された2018/19シーズンはひざの大怪我もあってリーグ戦10試合出場にとどまったが、2019/20シーズンは中心選手としてリーグ戦33試合に出場。新型コロナウイルスの影響で後半戦はほとんどのホームゲームを本拠地とは別のスタジアムで戦うことになったにもかかわらず、チームで2番目に多い6得点を挙げてサンタ・クララをクラブ史上最高の9位に躍進させる立役者となった。

 続く2020/21シーズンは清水移籍が決まるまでのリーグ戦9試合で7得点という大活躍。一時は得点ランキングで首位に立つなど、今まさにストライカーとして本格ブレイクかというタイミングでJリーグへとやってきた。様々な報道などを総合すると、清水がサンタ・クララに支払った移籍金は150万〜200万ユーロ(約1億9000万〜2億5000万円)にのぼり、複数年契約を締結したようだ。

チアゴ・サンタナの魅力

チアゴ・サンタナ
【写真:Getty Images】

 多額の投資をしたのだから、それに見合う活躍を期待されるのは当然のこと。そして、チアゴ・サンタナには大きな期待に応えられるだけのポテンシャルがあると、開幕からの2試合で証明しつつある。

 同じブラジル人で清水在籍2年目のFWカルリーニョス・ジュニオは、今季から同僚になったストライカーを「チアゴは本当にクオリティの高い素晴らしい選手だ」と絶賛した。

「パワーもあるし、キープ力にも非常に長けていて、相手のセンターバックに対して戦う姿勢も常に持ってくれていて、センターバックを苦しめる動きをしてくれている」

 相手ディフェンスとの巧みな駆け引きやファーストタッチの正確性、フィニッシュパターンの豊富さなど、チアゴ・サンタナの武器は多岐にわたる。身長184cm体重80kgと体格にも恵まれ、水準以上のパワー、スピード、テクニックの三拍子を兼ね備えるアナの少ないストライカーだ。

 鹿島との開幕戦で決めた同点弾の場面では、さっそくファーストタッチの正確性とゴール前での落ち着きを存分に発揮した。77分、ゴール前の混戦でチアゴ・サンタナのところに味方からの強いパスが入ると、背負っていた相手DFを押さえながら右足で巧みにボールを懐に収め、素早く左足を振った。難しい体勢ではあったが、冷静にタイミングを外してブロックに入った相手選手の股を抜く技巧的なフィニッシュだった。

 決めた本人も「少しタイミングを取って、相手の足が開いたところを狙ったゴールだった」と試合後に明かしている。一瞬で正しい判断を下すことが求められる場面で、自らの特徴と可能なプレーを即座に導き出すことができていた。

 福岡戦ではゴールこそなかったものの、巧みな駆け引きや臨機応変なポジショニングが光った。自軍ボール保持時は、基本的に相手のセンターバックの前に入るか、背後を取るかで細かく立ち位置を調整。ビルドアップのサポートが必要な場合には中盤まで降りてポストプレーで味方を助け、時にはサイドに開くフリーランニングで囮になることも厭わない。空中戦にも積極的に挑み、しっかりと強さを発揮するなど、様々な場面で献身的な働きぶりが目立った。

優れたストライカーの条件とは?

 カルリーニョス・ジュニオも「僕たちができるだけ距離を近くすることで、相手にさらにダメージを与えられると考えながらプレーしている」と、チアゴ・サンタナとの連係に手応えを感じているようだった。

 ゴールに背を向けてボールを受けても、手足が長く懐が深いため、相手ディフェンスは簡単に足を出せない。プレッシャーをかけにくる相手の逆を取るファーストタッチで素早くターンし、ひらりと前を向くプレーもお手の物。そのまま前進しながら前向きにボールをキープすることもできるのは、ゴールに向かう味方にとってありがたいことこの上ないだろう。

 欠点と言えそうなのは、ショートパスの精度がやや低めなのと、時折ボールを持ちすぎる場面があるくらい。味方がゴール付近までボールを運べば必ずシュートを打てるポジションを取っているし、重要な場面でファン・サポーターを煽って盛り立てるリーダーシップも見せた。

 優れたストライカーというのは、ただシュートが上手いだけではない。ボールコントロールが正確で、理想としてはファーストタッチでボールを最適な場所に置き、そのまま最高のフィニッシュに持ち込める型を豊富に持っているストライカーこそ、真の意味で優れた得点力の持ち主であることが多い。

 そういう意味で、チアゴ・サンタナはJリーグで躍動するために必要な能力を心身ともに高いレベルで備えている。ブラジルでは遅咲きの部類に入るが、欧州で磨かれ、さらにステップアップの道もあったかもしれない隠れた逸材だ。ポルトガル時代も両足に加えヘディング、PKなど様々な形でゴールネットを揺らし続けてきた。

「世界でも注目されるこのリーグでプレーできることをすごく幸せだと感じていたし、清水エスパルスというチームの一員として、このユニフォームを着てグラウンドに立てることを非常に嬉しく感じている」

「これからももっともっとゴールを決められるように、努力を続けていきたい」と語るチアゴ・サンタナのモチベーションは非常に高い。開幕から2試合で見せてきたパフォーマンスを継続できれば、清水を復権に導くゴール量産も十分に可能だろう。さらなる大活躍が楽しみだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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