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Jリーグ 2年前

「ワクワクがない」。なぜ大久保嘉人はJリーグに物足りなさを感じるのか? 自ら示したあるべき姿とは…【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「尖った武器」の重要性



「研ぎ澄まされたゴールの嗅覚」はオウンゴールのシーンにとどまらなかった。象徴的だったのが、後半31分の決定機。坂元達裕が右からドリブルで切り込み、浮き球のクロスを入れた。大久保は原輝綺とヴァウドの間をスルスルと抜け出し、フリーでヘッドを放った。これは惜しくも権田の右手に阻まれたが、得点の匂いがするポジションをいち早く察知し、侵入し、ピンポイントで捉えられる。その能力は本当に頭抜けているのだ。

「あと何センチか身長がデカければ上から叩けたと思いますけど(笑)。ああいう形はこの20年間で結構あった。最後にワクワク感を感じられたのはホントに嬉しかった」と彼は自分らしい形を出してJリーグラストマッチを締めくくれたことに、一応の達成感を覚えた様子だった。

 こういった「尖った大きな武器」を持つ人間が減り、似たような選手が増えているのは、最近の日本サッカー界の問題点と言われる。大久保と同世代の遠藤保仁も「一瞬で流れを変えられる選手はワクワクする。そういう選手をもっと見たい」と話していた。

 彼ら育成年代を過ごした90年代に比べて、今はフィジカル的要素が重視され、速さ・強さ・激しさ・運動量といった部分が前面に押し出されるようになった。その分、尖った個性が出にくいのだろうが、それでも見る者は「ワクワクさせてくれる選手」を強く求める。そこに物足りなさを感じるからこそ、大久保はストロングを押し出す重要性を今一度、身を持って示そうとしたのだろう。

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