「それをどうにかするのが自分の役目」

「乾みたいに底抜けに明るいやつはこのチームにはいなかった。『ただのサッカー小僧』って言ったら失礼かもしれないけど、根っからサッカーが好きな人なので、練習が終わってからもずっと他の選手とリフティングやボールを蹴ったりしてますし、いろんな選手とコミュニケーションを取っている。彼は僕なんかが比にならないほどのキャリアがある選手。そういう選手がいろんな選手と対等に接しているのは本当にプラス。乾も覚悟を持ってエスパルスに入ってきたし、今はすごくいい方向に行っているのを感じます」

　彼の明るいキャラクターは北川も認めていた部分。「アジアカップの時も乾君が来てから全員が話をするようになった」というエピソードも明かす。一致団結してJ1残留を果たそうと思うなら、誰もが気兼ねなく会話し、意思疎通を図るような風通しのいい環境が必要不可欠だ。乾自身もさまざまな紆余曲折を経て、フォア・ザ・チーム精神を前面に押し出そうと努力している。その姿勢が清水の結果にも影響しつつあると見ていいだろう。

「清水に来て、前の若い選手も外国人も含めてすごいタレントがいる。『なんでこの順位にいるのかな』って思ったくらい。それがサッカーの難しいところで、どうやってチームになっていくかが大事。それをどうにかするのが自分の役目でもあるので、とにかく残留という目標を果たしたい。自分はそのために来たので、力になれればと思っています」

　真摯な姿勢でこう語った乾。まっすぐな気持ちでサッカーに向き合い始めた34歳のアタッカーがもたらすものは少なくない。清水に残されたのはラスト10試合。彼が生き残りを左右するキーマンになる可能性は高そうだ。

（取材・文：元川悦子）

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