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日本代表 1年前

中村俊輔が感じる指導の難しさ。12年前の悔しさを知る元サッカー日本代表2人への期待【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子

自分の経験を生かす難しさ



 彼らを含め、2010年組の23人中12人がユニフォームを脱ぎ、新たな一歩を踏み出している。その多くが指導者に転身。鹿島アントラーズの監督2年目を迎える岩政大樹監督、JFAロールモデルコーチとなった中村憲剛、内田、阿部勇樹の3人など、さまざまな形で新世代の育成に当たっている。

 中村俊輔も来季から横浜FCのトップコーチに就任。駒野の方は古巣・サンフレッチェ広島のスクールコーチ就任が25日に明らかにされた。彼らのようにW杯の修羅場をくぐった面々が新たなタレント育成携わるのは日本サッカー界にとってプラス。というのも、今の代表コーチ陣に国際経験がないからだ。

 森保監督はもちろんのこと、パリ五輪世代のU-21日本代表の大岩剛監督、U-16日本代表の森山佳郎監督は選手・指導者として海外経験はない。U-20日本代表の富樫剛一監督はスペインで武者修行した人物だが、そういった世界基準を体感し、現場に落とし込める人材がまだまだ足りないのは事実。選手の方は欧州5大リーグでプレーする人材が年々増えているだけに、指導者がその流れに追いつかないと、日本サッカーのレベルは根本的には上がらないのではないか。

 そういう意味で、中村俊輔のような欧州CLとW杯経験を持つレジェンドの指導者転身は朗報。ただ、彼の感性をどう言葉にして現場に落とし込むかが難しい。

「全部真っ白にして始めないと自分の経験も生きない。B級ライセンスを取った時も答えを知ってる分、教え過ぎって言われた」と本人も難しさを吐露していた。自分が簡単にできることを他の人間ができるとは限らない。それを理解し、教えるのは本当に難しい。その命題には駒野や中村憲剛、内田らもぶつかるはず。そういった中から彼らなりの指導術を見出し、結果を出せるようになって、初めて独り立ちできるのだ。

 ポスト森保に代表レジェンドの指導者の名前が数多く挙がるような状況になれば、日本代表の未来も明るい。そんな日がいち早く訪れることを祈りつつ、引退した2人にはいち早く、力をつけてほしいものである。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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