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Jリーグ 1年前

京都サンガ曺貴裁監督の組織論「役職があれば言葉に重みが乗る」「こいつはものになる」と思った瞬間【育成主義2】

シリーズ:育成主義 text by 藤江直人 photo by Getty Images

「その姿を見て僕は『こいつはものになる』と思いました」



 チームがJ1へ昇格した2015シーズンもリーグ戦のピッチに立てないまま、当時J2の愛媛FCへ期限付き移籍。翌2016シーズンから完全移籍に切り替えたなかで結果を残し、J1の北海道コンサドーレ札幌で、3シーズンで60試合に出場した実績を引っさげて京都に加入した。

「最初に湘南でプレーしたときの康介は、プレースピードや判断が間に合わなくて、練習で本当にしょっちゅう泣いていました。でも、毎日の練習に対する負けず嫌いな姿勢がいまの康介を作っている。僕が京都に来た年の颯太もよく泣いていましたけど、その姿を見て僕は『こいつはものになる』と思いました。いまはあまりいないじゃないですか。感情を表に出す選手が」

 白井が「ジェネレーター」に指名されたのは、プレースタイルだけが理由ではなかった。内面に秘められた熱さが、チームにポジティブな影響をもたらすと判断された。同じく感情をよく表に出していた川﨑も、昨シーズンは「ヤングジェネレーター」を拝命している。

 話を白井に戻せば、再び曺監督のもとでプレーした2021シーズンのJ2第5節、ブラウブリッツ秋田戦で失点に絡むミスを犯した。そのまま0-1で敗れた秋田戦のハーフタイムに交代を命じられた白井は、第6節以降の3試合でベンチ外になった。怪我ではなかったと曺監督は振り返る。

「本人も自信を持てていない状態だったので、気持ちを整理する時間が当時の康介には必要だった。おそらく『試合に出られる』と思ってJ1の札幌から来たはずだけど、それでもなかなか上手くいかない状況に康介はちゃんと向き合っていたし、あの時間がいまの康介を形作ったと思っています。謙虚でいるとか人の話に耳を傾けるというのは、別になくてもいい要素かもしれないけど、プロサッカー選手として上に行くためには間違いなく持っていなきゃいけない要素だと思いますね」

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