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Jリーグ 1年前

京都サンガは「アカデミー出身の選手がチームを勝たせる」。個性を育てる曺貴裁監督とアカデミーの連携【育成主義4】

シリーズ:育成主義 text by 藤江直人 photo by Getty Images

アカデミー出身者への期待と責任



 さらに新3年生のなかでも有望株を、1月中旬から月末まで沖縄で実施したキャンプに帯同させた。世代別の日本代表に名を連ねているDF飯田陸斗、DF喜多壱也の2人は、すでに今シーズンのトップチームに2種登録されている。ともに左利きのホープたちに曺監督が目を細める。

「今年プロになった悠太と大空も含めて、楽しみな選手がたくさん出てきているのは非常に喜ばしいと思っています。ただ、彼らがこの先にメジャーになることもそうですけど、大事なのは彼らが競争に勝ってピッチに立つことで、京都に対する影響力やファンの方々に対するエネルギーといったものが間違いなく上がること。いい意味で責任を背負って、頑張ってほしいと常に思っています」

 アカデミー専用の人工芝グラウンドが遅れて完成したのには理由がある。

 初めてJリーグに参入した96年から、京都は毎年のように他チームの主力選手を補強してきた。対照的に育成組織出身の生え抜き選手がほぼ皆無だった状況を受けて、2004シーズンの途中から監督を務めた柱谷幸一氏は「育成組織の改善なくして、チームの未来なし」と危機感を募らせた。

 京都というクラブを根本から変えたいと訴えた柱谷氏の情熱は、京都のフロントをへて京都の生みの親として知られる、京セラの創業者にして名誉会長の稲盛和夫氏(故人)のもとに届き、日々の活動に欠かせない人工芝のグラウンドと選手寮の建設がすぐに決まった。

 稲盛氏はさらに学校法人立命館との橋渡し役を担い、ホームタウンのひとつである宇治市にある進学校の立命館宇治高校との提携も実現させた。京セラ、立命館、京都と「産・学・民」が三位一体となった「スカラーアスリートプロジェクト(SAP)」がスタートしたのが2006年だった。

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