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Jリーグ 1年前

湘南ベルマーレ、山口智監督が追求するスタイルの生命線とは? 躍動感を生む準備と距離【コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

「意識してやった」石原広教のプレーとは?


【写真:Getty Images】



 もちろん、どんなに正しい位置にいたとしても、身体を張ってボールを奪いに行くという原点を忘れてしまえば主導権を握ることはできない。そういった意味では、この試合の石原の行動はその重要性を再認識させるものだった。石原がルーズボールに身体を投げ出すように反応すると、途中出場の平岡大陽もそれに呼応した。湘南は苦しみながらも最少失点で試合を締めくくっている。

 小学生のときから緑と青のユニフォームを着ていた石原は、今やチームを引っ張る立場にある。「そこは自分の良さでもあるので、姿勢を見せる、チームを引っ張っていくという意味で気持ちを出すプレーは意識してやった」と24歳のリーダーは話していた。

「戦い方は意識しましたけど、4点入ってもやることは変わらない。ゴールに向かうアグレッシブさは僕の良さなので。そこをなくしたら僕じゃなく誰でもよくなる」。平岡の言葉は平岡だけではなく、湘南というチームにも当てはまるベースになる。

 開幕節でサガン鳥栖を5-1で破ったが、続く横浜FC戦、川崎フロンターレ戦では追いつかれて勝ち点2を手放した。京都戦、福岡戦では良さが影を潜める時間もあって連敗。YBCルヴァンカップでは2引き分けで、実に公式戦7試合ぶりの勝利となった。

 勝ち点3を掴んで課題を持ち帰るのは理想である。「次に向けていい部分も悪い部分もたくさん向き合える要素のある試合」と山口監督が言えば、石原も「開幕節以来の勝利なので、次も続けていかないといけない」と気を引き締める。

 4-1という大差にもかかわらず、試合後の山口監督に笑顔はほとんどなかった。湘南の目標が残留であれば、ガンバ戦の勝利を手放しで喜ぶことができただろう。しかし、昨季から掲げる5位以内という目標を達成するには、より高いハードルを越えていかなければならない。

(取材・文:加藤健一)

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【了】

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