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Jリーグはサッカー日本代表の逆を行く「そろそろ異変に気がつかないの?」【Jの十字架】

シリーズ:Jの十字架 text by 庄司悟 photo by Getty Images

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 FIFAワールドカップカタール閉幕から3ヶ月が経ち、明治安田生命Jリーグ開幕から1か月半が経過した。ドイツ代表、スペイン代表を破った日本代表の戦いは、Jリーグにどのような影響を与えているのか。新連載「Jの十字架」では“異端のアナリスト”庄司悟が「十字架」を用いて各クラブのスタイルを暴いていく。(文:庄司悟)


J1上位チームはサッカー日本代表と真逆


【図1:2022年J1の「Jの十字架」】


【図2:2023年J1第6節までの「Jの十字架」】

 まずは縦軸を「パス成功数」、横軸を「ボール支配率」とし、1年を通しての平均値を表した2022年J1(図1)と23年第6節までの平均値を表した「Jの十字架」(図2)を比較してもらいたい。22年は上位3チーム(横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島)がボールを繋いでいる右上ゾーンにいたのに対し、23年は上位5チーム中4チーム(ヴィッセル神戸、名古屋グランパス、広島、アビスパ福岡)がボールを繋いでいない左下ゾーンに位置している。

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 特に首位を走る神戸はシュート1本までの平均パス本数が22年に比べて約10本減となっているように、第6節まで結果を出している上位チームは、「ボール保持時の攻撃バリエーションを増やす」と宣言した日本代表とは逆の方向に行っているのだ。

 この状況を好影響なのか、悪影響なのかを論じるのはさておき、ボールを繋がずに勝利した、いまだに記憶に新しいドイツ代表戦、スペイン代表戦……そう、2022年のFIFAワールドカップカタールにおける型破りな「森保戦術」が明らかにJ1にも波及している。ちなみに、日本代表と対戦する2026年ワールドカップアジア予選の各代表は、森保戦術で挑んでくることが予想され、皮肉な現象が起こるであろうことを付け加えておく。

 さて、そのJ1版森保戦術にまんまとはまっているのが、2ケタ順位の川崎、ガンバ大阪、サガン鳥栖、横浜FCであろう。特に横浜FCは第6節までの対戦相手はすべて左下ゾーンに位置するチームだった。昇格チームに言うのは酷な気もするが、「そろそろ異変に気がつかないの?」と言いたくなるというものだ。


【図3:2023年J1第6節の「Jの十字架」】

 最後に第6節限定の十字架(図3)を見てもらいたい。第6節を終えて見え始めてきた傾向は、「修正→再構築→継続」のチームと、「無修正→構築→継続」のチームに分かれつつあることだろうか。前者の典型はゾーンを大移動した神戸、より先鋭化した名古屋、後者の典型は昨年と同じゾーンで18位と低迷する柏レイソルとなる。川崎と鳥栖は第6節に限れば通常の右上ゾーンではなく、左下のゾーンで勝点3を積み上げている。23年J1の傾向を感じ、再構築を始めつつある予兆なのだろうか。このように、毎節終了ごとに「Jの十字架」をもとに異変を読み取っていく。

(文:庄司悟)

庄司悟(しょうじ・さとる)

1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。

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