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Jリーグ 1年前

細部の詰めと小さな綻び。ヴィッセル神戸が痛感した横浜F・マリノスの強さ【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

勝負を分けた細部の詰め「チームとして話し合っていなかった」



 その後も汰木や武藤らが決定機を迎え、勝つチャンスは何度も巡ってきたが、この日の神戸は肝心なところで決めきれない。足踏み状態が続いた後半37分、マリノスは途中出場のヤン・マテウスのクロスからエースのアンデルソン・ロペスが豪快なヘッドで3点目が生まれ、逆転に成功する。この勝負強さこそが昨季王者の強み。途中からの修正力と対応力、高度な決定力はやはりJ1屈指と言うしかない。

 神戸にとって悔やまれるのは、3失点目につながった酒井高徳のスローインの場面だ。「スローインを後ろに投げるのか、前に投げるのかをチームとして話し合っていなかった。テツ君(山川哲史)は後ろでもらおうとしてて、ゴウ(酒井)さんは前に投げる形を考えていた。結局、前に投げて失ってしまった」

 齊藤未月はこう説明したが、酒井高徳にしてみれば、昨季後ろに投げて失点を重ねた経験があったため、前を意識して大迫に投げたという。その結果、自分にボールが戻り、相手に挟まれ、ヤン・マテウスに奪われる結果になった。最終的には個人のミスだが、プレーに関わった選手間の意思疎通が不足していたのも事実。本当に細かい部分ではあるが、勝負の神は細部に宿る。彼らはそれを今一度、強く脳裏に刻み込んだ方がいいだろう。

「Jリーグでは、ボールを取ったら一息ついたり、1回フワッとなるチームが多いけど、マリノスはしっかり走ってるし、出し手も受け手もゴールに向かう意識ができている。ここ数年間、彼らが続けてきたゴールに向かう姿勢がより危ないんだと痛感した」と酒井高徳は神妙な面持ちで語っていたが、彼や神戸の面々はそれを今後に生かすしかない。本気でタイトルを取ろうと思うなら、一瞬の隙も作らない集団を目指すしかないのだ。

 悔しい逆転負けをどう今後に生かすか。それが何よりも重要だ。3月11日の浦和レッズ戦に敗れた後もすぐさまリカバリーを見せたように、神戸は大型連休の連戦に向けて課題の修正を図ることが肝要だ。経験豊富な選手が揃うチームだけに、その作業はスムーズに進むはず。まずは29日の湘南ベルマーレ戦で結果を出すこと。そこに集中すべきだ。

(取材・文:元川悦子)

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