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Jリーグ 1年前

細部の詰めと小さな綻び。ヴィッセル神戸が痛感した横浜F・マリノスの強さ【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「簡単に失点しすぎている」と指摘したのは…



 勢いづいた神戸はさらに押し込み、エース・大迫が追加点を挙げる。インサイドに絞った武藤のサイドチェンジを汰木が受け、鋭いクロスを入れた瞬間、背番号10は角田涼太朗と永戸勝也の間に巧みに侵入。打点の高いヘッドをお見舞いしたのである。

 日頃、口数の少ない絶対的エースも納得いく今季6点目だったに違いない。「康也がいいボールを上げてくれたので、DFの前に入れましたし、よかったと思います」と話した。

 早い段階で2点をリードし、優位に立った神戸。誰もがいけるという感触を抱いたに違いない。だが、マリノスはそのまま黙っている相手ではなかった。大迫のゴールからわずか5分後に傑出した決定力を誇るアンデルソン・ロペスの一撃が飛び出し、瞬く間に1点を返してきたのだ。

「簡単に失点しすぎている」と酒井高徳が語気を強め、齊藤未月も「2-0になったとき、もっと試合巧者になるべきだった」と反省の弁を口にした通り、この1失点が1つの潮目になったのは間違いないだろう。

 直前の31分、齊藤はマルコス・ジュニオールを削ってイエローカードを受けているが、それもチームにマイナス影響を与えたと齊藤自身は考えている様子だ。

「あのイエローをもらって、あんまりつぶしにいけなくなってしまった。今日の審判の感じだと、同じ感じでファウルをもらったらもう1枚イエローが出ちゃうんじゃないかという恐怖心が生まれたから」と背番号16は言う。確かに神戸のハイプレスは彼や山口蛍ら中盤のアグレッシブなアタックによって支えられていた部分もあった。彼らの勢いが弱まると、マリノスが主導権を握る時間も増える。小さな綻びが少しずつ積み重なっていったのかもしれない。

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