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Jリーグ 10か月前

「甘さがある」横浜F・マリノスが感じた痛み。町田ゼルビアの戦略にハマった原因とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

本当に強い集団



「こっちが引いてしまうとマリノスは本当に強くて自由にやられてしまう。だからこそ、勇気を持ってガンガン行くことが必要だったし、僕らの戦略だった。それがハマって得点まで行けた」と大ベテランの深津康太も語っていたが、黒田監督の狙いがズバリ的中した前半だったと言っていいだろう。

 マスカット監督としては、この悪い流れを何としても断ち切り、2点差をひっくり返さなければならなかった。そこで、後半開始時にマルコス・ジュニオールと木村を下げ、榊原彗悟、村上悠緋という若い2人を投入して活性化を図る。

 これで少しは試合展開が落ち着いたかと思われたが、中央の守備が非常に固い町田相手になかなか決定機を作れなかった。

 町田に3点目を奪われたのは、まさにそんな時間帯。後半22分、町田は途中出場したばかりの主力・藤尾翔太と平河悠のホットラインからダメ押し点を挙げる。藤尾が深い位置から中に折り返したところに平河が飛び込んでくる形だった。「普段から逆サイドからの侵入は意識していた」と藤尾がしてやったりの表情を浮かべたほど、彼らにとっては理想的な3点目だった。この時点でマリノスの勝利への道は閉ざされたと言っても過言ではなかった。

 結局、後半34分にも平河が4点目を決めて0-4に。マリノスは井上健太のクロス性のキックが直接ゴールに吸い込まれて一矢報いたが、最終的には1-4でタイムアップの笛。シュート数4対17という王者らしからぬ内容で、マリノスは3回戦敗退を余儀なくされた。

 2021年は2回戦、2022・2023年は3回戦止まりと、近年のマリノスは天皇杯で上位進出できないケースが続いている。今回は得点源のアンデルソン・ロペスやヤン・マテウス、エウベルという外国人トリオが揃って欠場したことも響いたが、選手が入れ替わっても戦えるところを示せるのが本当に強い集団だ。そういう意味では物足りなさが拭えなかった。

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