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最悪の出来と最高の結末。横浜F・マリノスFW植中朝日が断ち切った負の連鎖とシゲさんの言葉

text by 加藤健一 photo by Getty Images

「次はお前が決めろよ」に応えた植中朝日


【写真:Getty Images】



 なかなかゲームに入れずに迎えたハーフタイムが明け、ピッチに戻ってきた植中に、松永成立GKコーチが歩み寄って何やら声をかけていた。

「お前は結果を残してスタメンに残らないといけない選手なんだから」

 日産自動車サッカー部時代から現在に至るまで、25年以上に渡ってこのクラブを支えてきたレジェンドは、愛のこもった一言で親子以上に年の離れた植中を励ました。杉本が2点目のゴールを決めた際にも「次はお前が決めろよ」と檄を飛ばしたという。

 84分に杉本健勇のゴールが生まれて2-0となり、マリノスは勝利に大きく近づいた。さらに、後半アディショナルタイムに両チームが1点ずつを決めて3-1に。その直後、杉本からパスを受けたエウベルが丁寧にパスを出す。これに背番号14が右足を振り抜いてゴールに突き刺した。

「シゲさん(松永)の言葉を有言実行できてほっとしてます」と試合後の植中は振り返る。「(チャンスを何度も)外してしまって、今日は本当に良くなくて、負の連鎖になっていたんですけど、最後まで走った結果、ゴールを決めることができて良かった」と安どの表情を見せた。

 最大の得点源であるアンデルソン・ロペスが最前線に君臨し、この試合では杉本もゴールを決めた。植中は「ゴールを決めないと生き残っていけない」と危機感を感じつつ、このゴールがチームに与える影響にも触れた。

「怪我人もちょっと多くて、これからは総力戦になってくる。1人ひとりの活躍がチームの勝利につながる。今日のようなプレーじゃ全然だめなので、毎試合、毎試合、自分が成長してレベルアップして勝利に貢献できるようにしたい」

 この試合だけを見れば、植中のゴールがなくても結果は変わらなかっただろう。ただ、このゴールが転機となって植中が1つ階段を上がることができれば、1つの負けも許されないマリノスにとっても大きな戦力になる。

 試合後、「シゲさん」は無言で植中にハイタッチした。ゴールという結果で応えた植中に言葉はいらなかったのかもしれない。

(取材・文:加藤健一)

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