3位:韓国代表
【写真:Getty Images】
監督:ユルゲン・クリンスマン
FIFAランキング:23位
戦力値平均:7.7(攻撃力9、守備力8、采配6)
プレミアリーグ得点王経験者であるソン・フンミンや、昨季セリエAでベストイレブンに名を連ねたキム・ミンジェら世界的なタレントを擁する韓国代表は、戦力的に見れば間違いなく優勝候補に名を連ねるだろう。しかし、蓋を開けるとグループリーグでヨルダン代表とマレーシア代表に引き分け、決勝トーナメント1回戦でもサウジアラビア代表とPK戦までもつれ込む展開に。記録上は3試合連続でのドローとなっている。
「攻撃」の戦力値は開幕前と同じく「9」とした。先述したソン・フンミンを筆頭に、今季プレミアリーグで二桁ゴールを記録しているファン・ヒチャンやパリ・サンジェルマンでプレーするイ・ガンインら欧州トップリーグの第一線で活躍する選手が名を連ねている。ファン・インボムも好調で、オフェンス陣のタレント力は今大会屈指だろう。
しかし、ファン・ヒチャンは左臀部の筋肉疲労のため開幕から2試合を欠場。直近の2試合で復帰を果たしたが、両足にテーピングを巻いており、まだベストなコンディションではなさそうだ。彼が前線にいるかどうかで決定力は大きく変わってくるため、先発で起用できないのはチームとして大きな痛手だ。
一方の守備力は開幕前と比較すると1ダウンの「8」とした。キム・ミンジェという世界的なDFがいる中で、グループリーグの3試合ではベスト16以上のチームでは最多タイの6失点を献上している。最終ラインとボランチの間のスペースを使われて失点をするケースが多く、チームとしての守備が機能していない場面が多く見られた。
グループリーグ最終戦でマレーシア代表に3失点を喫する緊急事態を受けて、ユルゲン・クリンスマン監督は自らの哲学を捨てたようだ。韓国代表の就任会見で「1-0で勝つことより4-3での勝利を好む」と発言していたドイツ人指揮官だが、サウジアラビア代表戦との決勝トーナメント1回戦では就任後初めて[3-4-2-1]のシステムを採用。守備時は5バックで守り、ワントップのソン・フンミンのスピードを活かす“堅守速攻”のスタイルに変えたのだ。
このシステム変更が功を奏したのか、韓国代表の「守備」は大幅に改善された。相手の前線の選手に対しては3バックのうち誰か1人のCBがハードに潰すことで起点を作らせず、そこからカウンターを始める狙いも伺えた。一方で、選手の自由度が高い「攻撃」はほぼ機能せず、急造だった影響もあってかカウンターの精度がかなり低かった。結果的にサウジアラビア代表戦でゴールを奪ったのは、1点を追いかける展開で4バックに戻してからのパワープレーであり、チームとしての約束事が少ない分、選手の個人能力任せなのは変わっていない。
攻撃的に戦うと守備が緩くなり、守備的に戦うと攻撃が機能しなくなる。クリンスマン監督の「采配」はかなり偏っており、現時点ではバランスの良い戦い方を見出せていない。ただ、崩壊していた守備を急造ながら再建したのは評価できる点だ。ベスト8以降はどちらの戦い方で勝負に出るのだろうか。