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Jリーグ 2か月前

平河悠は「近い将来、サッカー日本代表に入る」。FC町田ゼルビアで輝く「個」。新旧の恩師が評価する能力とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

体現した「自分たちの強み」「GKの動きを見ながら…」



 加速しながら右足でボールを引っかけ、強引に前へ運びながら鹿島ゴール前へ抜け出す推進力にも変えた。平河を食い止めようと、慌てて戻ってきったボランチ樋口雄太も間に合わない。目の前にいるのは鹿島の守護神、早川友基だけ。平河は迷わずに利き足とは逆の左足を振り抜いた。

「自分の特徴としてファーへ体を捻って打つシュートが得意なので、ゴールキーパーの動きを見ながら、自信を持って蹴り込みました。ボールを奪ってからのショートカウンターは自分たちの強みでもあるし、パスをもらってから冷静にシュートまで持っていけたのがよかったと思っています」

 言葉通りにゴール右側を狙った強烈な弾道が、早川の左手を弾いてゴール内に吸い込まれていく。出場3試合目で、しかもホームのファン・サポーターの前で決めた嬉しいJ1初ゴール。歓喜の場面を巻き戻していくと、町田の十八番でもある高い位置でのボール奪取に行き着く。

 ともに1勝1分けで迎えた一戦はキックオフ直後から、町田が得意とするロングボールの蹴り合いに鹿島を引きずり込んだ。両チームともに無得点の均衡が崩れる直前も、ロングボールの応酬から鹿島の左サイドバック、安西幸輝が自陣の左タッチライン際で何とかボールを収めていた。

 ここで安西は斜め右前方にいた、日本代表のボランチ佐野海舟にボールを預ける。ランコ・ポポヴィッチ新監督のもとで多用している最終ラインからのビルドアップ。しかし、町田はロングボールだけでなく、中盤や前線でほぼマンマークでプレスをかける作戦も用意していた。

 この場面では浦和レッズから期限付き移籍で加入した、ボランチ柴戸海が佐野との間合いを詰めた。柴戸の気配に気がついた佐野は、反転から左側へ切り返して柴戸のマークを剥がそうとした。次の瞬間、待っていましたとばかりに佐野の死角からMFバスケス・バイロンがボールに突っかけた。

 こぼれ球を柴戸がワンタッチで最前線の藤尾につけて、ショートカウンターを発動させた。佐野が前へ運ぶだろう、という予測のもとで濃野を含めた数人が前がかりになっていた。

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