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Jリーグ 1か月前

藤尾翔太の第一印象は「使えるのかな…」。FC町田ゼルビアで、なぜここまでの進化を遂げたのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「決められなかった場面はあまり気にしても仕方がない」


「僕の場合は決めても決められなくても、開始早々にチャンスがあった試合では、逆にもう一回チャンスが来ると思っている。実際に思った通りにまた訪れたチャンスで決められたのはよかったし、チームとしてもFWが点を取ればいい流れに乗っていける。決められなかった場面はあまり気にしても仕方がないし、そこはもっと練習を積んで、次はチームを楽に勝たせられるFWになりたい」

 後半開始直後の50分には、頭でゴールネットを揺らした。左サイドから仙頭が放ったクロスが、DF大南拓磨の頭を介して山なりの軌道に変わった直後。ファーで佐々木と激しく競り合いながら、藤尾は落下してくるボールに頭を先にヒットさせてゴール右隅へ流し込んだ。

 しかし、直後にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入する。自陣からのロングボールを藤尾が収め、左側の藤本へパスを出した時点で藤本の体がわずかにオフサイドラインを越えていたと確認され、幻のゴールに変わる前に藤尾はすでに気持ちを切り替えていた。

「VARが介入する前に、ベンチの(昌子)源くんが『オフサイドで取り消されても、気持ちは冷静に』と言っていたので、その時点で『ああ、オフサイドなのか』と。まったく焦らなかったし、がっかりもしなかったし、逆に『もう1点取ったる』くらいの気持ちになっていました」

 ただ、藤尾のチャンスはもう巡ってこなかった。チョン・ソンリョンのロングパスを胸で巧みに前へすらした瀬川が、意表を突くスルーパスを放った71分。飛び出したFW小林悠を、ペナルティーエリアの外で倒した守護神・谷晃生がDOGSOで一発退場となったからだ。

 黒田監督はJ1リーグ戦デビューとなるGK福井光輝、DF奥山政幸、そしてキャプテンのDF昌子源の3人を投入。システムを[5-3-1]に変えて、1点を守り切る戦いにスイッチした。

 町田が退場者を出すのは、2枚目のイエローカードをもらった仙頭が60分にピッチを去った、ガンバ大阪との開幕戦以来となる。もっとも、黒田監督は「あのときは退場者を出したシチュエーションまで練習をしていなかったので、うまく対応できなかった」と振り返る。

 ガンバに攻め込まれた末にファウルを与え、84分にFW宇佐美貴史に直接FKを決められて1-1で引き分けた再現は許されない。数的不利を想定した練習の成果を出す状況が図らずも訪れた。

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