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Jリーグ 1か月前

藤尾翔太の第一印象は「使えるのかな…」。FC町田ゼルビアで、なぜここまでの進化を遂げたのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

背水の陣でFC町田ゼルビアの一員に


【写真:Getty Images】



「開幕戦の後にチームで改善策を練ってきた。一枚剥がされたときに全員が素早く帰陣するところと、ゴール前へクロスを入れられてもしっかりとはね返す枚数の多さが失点を防いだと思う」

 こう語った藤尾は谷の退場後は1トップに、FWミッチェル・デュークが投入された89分以降は2列目に入り、自軍のゴール前へ戻る動きだけでなくプレスでの二度追いでもピッチを走り回った。

「一人少ない状況で僕も戻らないと、ゴール前の枚数も少なくなる。そういう意識でいました」

 フル出場した藤尾の総走行距離は、両チームで最長の12.301kmに到達した。同じくフル出場した名古屋グランパスとの第2節で12.037km、鹿島アントラーズとの第3節では12.519kmとともにチーム最長をマークして勝利に貢献した。チームのために守備でも走り回る姿も成長した跡になる。

「そのときの場面、場面で走っているので、そんなに数字は気にしていない。ただ、結果的にそういった数字が出ているんやったら、体がしっかり動いている証拠なのでいいのかなと思う」

 大阪府和泉市で生まれ育った藤尾はときおり関西弁をまじえながら、特別なプレーは何もしていないと強調する。黒田監督が「大きく成長した」と称賛した点を問われても、特に表情を変えなかった。

「ずっと筋トレを課してきた成果もあって、体がすごく動くようになった。さらに試合に使ってもらえたなかで、ゴールに繋がる結果も増えた。勝負強さという面では、この1年で成長したのかな、と」

 セレッソ大阪U-18から2020シーズンにトップチームへ昇格した藤尾は、初めてベンチ入りした同年9月5日の浦和レッズ戦で86分から途中出場。アディショナルタイムの93分に初ゴールを決める鮮烈なデビューを飾るも、その後はほとんどチャンスをえられなかった。

 すべて途中出場で5試合、プレー時間もわずか26分にとどまっていた2021年6月に水戸ホーリーホックへ、2022年1月には徳島ヴォルティスへそれぞれ育成型期限付き移籍。前者で8ゴールを、後者ではチーム最多の10ゴールをマークして、自信を手土産にセレッソへ復帰した。

 しかし、昨シーズンも開幕から3試合続けてベンチ外になった。危機感を抱いた藤尾は3度目の育成型期限付き移籍で、青森山田高から異例の転身を遂げた黒田監督のもと、悲願のJ1昇格を目指す戦いをスタートさせていた町田の一員になった。背水の陣と言っていい決断だった。

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