「現実としてそれがある」川崎フロンターレの課題
【写真:Getty Images】
「まあ、(先発を)外れる試合もありますし、普通のことだと思っていますけど」
今シーズンの川崎Fは、昇格組をホームに迎えた一戦をすでに終えている。ジュビロ磐田に4-5で、FC町田ゼルビアには0-1でそれぞれ敗れ、東京Vとは前述したように引き分けた。それでもファン・サポーターは試合後に、ブーイングではなく拍手とエールで川崎Fを鼓舞してくれた。
「ファン・サポーターの方もストレスを溜めているはずだし、本当に申し訳ない、という思いが真っ先に出てくる。こういう苦しい状況にいる、という不名誉な現実を受け止めないといけない」
胸中に秘めた思いを吐露した家長は、大宮アルディージャから加入した2017シーズン以降で初めて味わっている、苦状を打開するための自分なりの方策をこんな言葉を介して表したこともある。
「相手が逆を取られることは、いまはほとんどないと思っている。逆というのは体の逆じゃなくて思考の逆で、それがないと90分間のなかでなかなか相手が弱っていかない。実際、いまは最後まですごく元気ですよね。現実としてそれがあるというか、ここ最近の課題だとずっと思っています」
相手の逆を取るプレーがボクシングで言うジャブとなり、その積み重ねが相手の思考回路を疲弊させ、弱ってきた後半に一気呵成で攻め込む。5シーズンのうちJ1リーグ連覇を2度も達成するなど、全盛期の川崎Fの戦い方が肌に染みついているからこそ、チーム全員でジャブを放ちたいと家長は思い描いている。
ただ、当時とは所属している選手も含めてまったく違う。一気に飛躍するのは難しいとわかっているからこそ、浦和戦後にあえて「いまも苦しいです」と語った家長は、さらにこう続けている。
「いきなり三歩も進むことはあり得ないので、これからも変わらずに、何ができて、何ができていないのかを個人個人が考えるべきだと思う。一歩進んでも二歩下がることも、場合によっては三歩下がるかもしれないけど、それらをしっかり受け入れて、下がっているときでも前へ進めるかどうかが大事になる」
勝って兜の緒を締める家長の脳裏に、自身の今シーズン初ゴールに対する喜びが入り込む余地はない。強い川崎Fをいかにして復活させていけばいいのか。中2日で敵地へ乗り込む6日のアビスパ福岡戦で今シーズン初の連勝を目指しながら、さらに“その先”をにらんだ戦いが続いていく。
(取材・文:藤江直人)