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Jリーグ 2か月前

「僕は小さなころから…」湘南ベルマーレ、池田昌生の涙のわけ。救世主になって、大好きな人へ恩返し「いい報告が…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

ゴール後に「それで、ちょっと感極まっちゃって…」

「サッカーをしていたら、あのようになるかな、と感じるときが何となくある。だからこそあの場所に入っていく動きを意識していたし、自分のところにこぼれてくると信じながら走っていきました」

 果たして、池田が思い描いた通りの状況が生まれた。鈴木章、昌子、町田のボランチ前寛之の全員が触れなかったボールが、目の前へ転がってくる。池田は摩訶不思議な感覚のなかにいた。

「スローモーションに感じたというか、けっこう時間があったので、自分のなかで選択肢がいろいろとありました。とにかくシュートでボールをふかさないことと、あとは(谷)晃生がニアを消してきたのが見えていたし、さらにファーには別の選手がカバーに入ってきたのも見えていたので…」

 だからこそ、冒頭で記したように「コースがないじゃん」と思った。それでも、シュートを打たないわけにはいかない。利き足の右足から放たれた低く速い一撃は、まず谷の、続けて後方の昌子の股間を立て続けに射抜いた。ゴールの左隅へ突き刺さるや、池田は雄叫びをあげながら何度もガッツポーズを作った。

 そして、湘南サポーターが狂喜乱舞する、ゴール裏のスタンドへ走っていったときだった。

「頭のなかにパッと出てきたのがおばあちゃんで。それで、ちょっと感極まっちゃって…」

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