ゴール後に「それで、ちょっと感極まっちゃって…」
「サッカーをしていたら、あのようになるかな、と感じるときが何となくある。だからこそあの場所に入っていく動きを意識していたし、自分のところにこぼれてくると信じながら走っていきました」
果たして、池田が思い描いた通りの状況が生まれた。鈴木章、昌子、町田のボランチ前寛之の全員が触れなかったボールが、目の前へ転がってくる。池田は摩訶不思議な感覚のなかにいた。
「スローモーションに感じたというか、けっこう時間があったので、自分のなかで選択肢がいろいろとありました。とにかくシュートでボールをふかさないことと、あとは(谷)晃生がニアを消してきたのが見えていたし、さらにファーには別の選手がカバーに入ってきたのも見えていたので…」
だからこそ、冒頭で記したように「コースがないじゃん」と思った。それでも、シュートを打たないわけにはいかない。利き足の右足から放たれた低く速い一撃は、まず谷の、続けて後方の昌子の股間を立て続けに射抜いた。ゴールの左隅へ突き刺さるや、池田は雄叫びをあげながら何度もガッツポーズを作った。
そして、湘南サポーターが狂喜乱舞する、ゴール裏のスタンドへ走っていったときだった。
「頭のなかにパッと出てきたのがおばあちゃんで。それで、ちょっと感極まっちゃって…」