池田昌生にとっての“おばあちゃん”という存在
3月29日に89歳で他界していた最愛の祖母の面影が、池田の涙腺を緩ませた。1-0で勝利した直後のフラッシュインタビューでも「いま、天国で見てくれていると思う」と声を震わせ、チームメイトたちに遅れて、一人だけでゴール裏へ向かって勝利のダンスを舞うときも何度も目頭をおさえた。
「おばあちゃんの話をすると、また泣きそうになっちゃうから、ちょっと…」
池田は照れ笑いを浮かべ、涙をこらえながら、思い出をたどるように言葉を紡いでいった。
「僕は小さなころからおばあちゃん子で、幼稚園の送り迎えもそうやし、サッカーの練習の付き添いもそうやし、夜ご飯を食べるときもずっと見てもらっていて。こうしてプロのサッカー選手になれたのも、おばあちゃんの支えがあったからなので。そうですね…うん、おばあちゃんにいい報告ができたと思います」
大阪市大正区で生まれ育った池田は、両親が仕事で多忙だった関係で、祖母と一緒にいる時間のほうが長かったという。セレッソ大阪の下部組織から、卒業生の鎌田大地に憧れ、背中を追うように進学した東山高校から2018年にJ3の福島ユナイテッドFCへ加入。2021年に完全移籍で湘南の一員になった。
プロになってからは離ればなれになっていた大阪の実家から、3月下旬に緊急の連絡が入った。
「老衰のような感じで、いつ死ぬかわからないと母親から連絡が来て、とんぼ帰りで大阪へいってきました。そのときはすでにしゃべれない状態だったんですけど、おばあちゃんの顔は見られて。おばあちゃんはその数日後に亡くなりましたけど、それでも最期、会えたというところはよかったと思っています」
ここから不思議な偶然が重なっていく。