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10番としての責任、そして挫折。香川が感じた本当のトップとの差。「もっと厳しい環境で勝ち取るしかない」

エースとして期待されながら、1ゴールも挙げることが出来ずに初のW杯を終えた香川真司。マンチェスター・ユナイテッドでの苦しいシーズンに続いて屈辱的な思いを味わったなかで、何を思ったのだろうか。

text by 元川悦子 photo by Getty Images

「このW杯に懸けてきた。今は気持ちの切り替えが難しい」

10番としての責任、そして挫折。香川が感じた本当のトップとの差。「もっと厳しい環境で勝ち取るしかない」
香川真司【写真:Getty Images】

 サポートメンバーとして4年前の南アフリカW杯をスタンドで見守った時、香川真司はまさか4年後の2014年ブラジルW杯で日本が惨敗し、自分自身も屈辱的な思いを味わうなど、全く考えていなかっただろう。

 実際、南ア以降の4年間の躍進は凄まじいものがあった。10-12シーズンまで在籍したボルシア・ドルトムントではリーグ2連覇の原動力となり、ブンデスリーガ通算21ゴールをマーク。名門マンチェスター・ユナイテッド移籍1年目の12-13シーズンは20試合6得点。苦しみながらも結果を出した。

 昨季は監督交代などの影響で不振を極めたものの、全体的には個の力を高め、世界トップレベルでやれる実力を見せるという右肩上がりのキャリアを歩んでいただけに、今回のW杯での不本意なパフォーマンスは本人もショックだった違いない。

 24日のコロンビア戦(クイアバ)で後半39分に自らのシュートが枠を外れた直後、清武弘嗣との交代を告げられ、1ゴールも奪うことなく敗れ去った香川は、試合後の取材ゾーンでこう切り出した。

「勝つことを目標にやってきて、でも1勝もできなくて、それが結果として残ったので、ただ悔しいです。ベンチに下がった時は悔しかったし、これで終わりだと思うとすごく寂しかった

(出しきれなかった?) 結果的にそうだし、個人的にはその思いがあります。こういう4年に1度の大会で勝ち切るためには、自分たちのサッカーをする、それを出し切るメンタリティーやチームとしての強さを初戦から出さないといけないと痛感させられたし、やはり経験を含めて物足りなかった。

 僕自身、このW杯に懸けてやってきたので、今は気持ちの切り替えが難しいです」と彼は普段以上に小さな声で反省の弁を口にした。エースナンバー10を背負う人間として、チームの勝利に貢献できなかった悔しさと虚しさを、香川は体いっぱいに表現していたといっていい。

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