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意志あるところに道は開ける――。欧州挑戦を決めた武藤の思い。FC東京・立石GMが語る移籍の真実

text by 藤江直人 photo by Getty Images

着実にクリアする設計図。さらなる可能性が広がる武藤の未来

 プレミアリーグの名門チェルシーから届いたオファーが表面化したのが4月上旬。その後にヨーロッパを視察した立石氏は、武藤に対する関心の高さを目の当たりにしている。

「特にドイツは日本の新しい選手を常にチェックしているし、実際にスカウトたちが日本に見に来ている。武藤へのオファーは全部で5つ。マインツやオーストリアのザルツブルクは去年から追いかけてきたようですけど、他のオファーは『チェルシーが興味をもっている』『どんな選手なんだ』と調べたみたいですね」

 チェルシーへ移籍するか否かで周囲が過熱するなかで武藤はしっかりと結果を残し、同時進行でチェルシーという言葉に浮き足立つことなく、サッカー人生の設計図に照らし合わせながら熟慮を重ねた。

 最終的にマインツへ決めた理由に、武藤が急成長を遂げた理由の一端が垣間見える。

「最初から高望みをして自分の実力に合っていないチームに行くよりは、自分に合ったチームに行きたいと思いました。マインツは誠意を見せてくれましたし、自分を本当に必要としてくれたので」

 自らの現在位置をしっかりと把握しながら、シーズン開幕へ備えた調整に余念がないいま現在の武藤に、新たなキャリアパスを設定させるとこうなるだろう。

「マインツでしっかりと結果を残す」
「そこからステップアップを果たしていく」
「日本代表としてW杯ロシア大会を戦う」

 意志あるところに道は開ける――。アメリカ合衆国の第16代大統領、エイブラハム・リンカーンが残した名言を実践し、可能性をどんどん広げていく武藤の大きな背中は、他のJリーガーだけでなく、未来を夢見るサッカー少年たちを含めたすべてのプレーヤーが追いかけるべき羅針盤となるはずだ。

【了】

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