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元セレソンが語る日本サッカー最大の欠陥とは?「いつも10対0で勝とうとしているように見える」

日本サッカーを見続けてきた元ブラジル代表ジウマール。日本サッカーの進歩は認めるものの、未だに変わらない悪癖もあると指摘する。1点を守り切れない精神面の脆さを解決するヒントは94年W杯を制したブラジル代表にあった。

text by 田崎健太 photo by Sachiyuki Nishiyama

「日本のサッカーはいつも守備が開けっぴろげ」

元セレソンが語る日本サッカー最大の欠陥とは?「いつも10対0で勝とうとしているように見える」
ジウマール・ルイス・リナルジ【写真:Sachiyuki Nishiyama】

 元ブラジル代表のジウマールにはこれまで何度も話を聞いてきた。現役時代、そして引退後もセレッソ大阪をずっと見てきた彼の日本のサッカーに対する意 見は傾聴に値する。

 ジウマールは、香川真司、柿谷曜一朗などの名前を挙げて、日本のサッカーは進歩したことを認める。ただ、未だに変わらない悪癖もあると指摘する。

「日本のサッカー選手はクラブチーム、代表問わず、いつも10対0で勝とうとしているように見える。1点差で勝っていても、2点目を取りに行く。

 もちろん、守備を固めて、リスクを減らした上ならば、その姿勢は悪くない。しかし、日本のサッカーはいつも守備が開けっぴろげだ。だから2点差、3点差で勝っていても、安心できない」

 ジウマールは以前から、日本の選手はリードしているときに、攻め急ぎすぎる、そして失点すると浮き足立つ傾向があると警告していた。

「サッカーはポーカーの様なトランプと同じだ。勝つための戦術がある。しっかり守ってカウンターで1点、それを守りきっても勝ちは勝ちだ。相手の出方によって戦い方を変えるんだ」

 過去、この悪癖が露呈したのは2006年のW杯ドイツ大会のことだった。

 日本代表は初戦でオーストラリア代表と対戦し、1点リードしながら、約7分間で三失点を喫し、監督のジーコは厳しく批判された。ジウマールはその批判は少々的外れだと考えている。

「問題は監督じゃない。監督がいくら指示を出しても駄目なんだ。精神的に準備ができた選手が必要だ。全員でなくともいい。何人かは浮き足立つ周りを押さえる選手が必要だ」

 その点、ジウマールは今回の日本代表にW杯を経験した選手が多数選ばれたことを評価している。遠藤保仁は3度目、キャプテンの長谷部誠、本田圭佑たちは 2度目となる。

 W杯で継続して好結果を出すためには「試合をコントロールすること」だとジウマールは言う。

「W杯でのアフリカのチームを思いだしてくれ。あそこには世界的な才能ある選手が揃っている。大会によってはベスト4まで進むこともある。しかし、優勝はできない。そして、その次の大会はどうだ? 彼らは継続して結果を残したことがない」

 その理由として、感情の起伏が激しすぎることだとジウマールは分析している。

「点を取った後、ダンスをして喜ぶのはサッカーではない。本当に強いチームは、点を取った後、すぐに気持ちを切り替える。勝負は最後の“細部”で決まることを知っているからだ」

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