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ザックの狙い通りだったギリシャ戦前半。相手の退場で一変、数的優位を生かせなかった理由とは?

text by 神谷正明 photo by Getty Images

相手に退場者が出て一変。焦りが“クロス大作戦”を招く

 しかし、ギリシャが退場者を出したことで流れが変わっていった。「11人の方が逆にやりやすくて、10人の時の方が正直やりにくかった」とは長友の弁だが、ギリシャがプレッシングを諦めて自陣で守りを固めるようになって、それまでのようなスペースがなくなった。

 もっとも、それでも後半の途中までは中と外の使い分けでギリシャを走らせ、バイタルエリアでボールを受けることもできていた。人数が少ない状況で走り回ったギリシャの選手たちは疲れから対応が遅れることが多くなり、ファール覚悟のプレーで止めざるを得なくなっていった。

 ギリシャが退場者を出して守りを固めてきても、しばらくは日本のプレーも悪くなかったのだ。

 ただ、プレッシャーがなくて余裕を持てたことが災いしたのか、ボール受けてからワンテンポ置いて次のプレーに移ることが多く、それでギリシャに準備する時間を与えていた。

 ワンタッチやフリックをうまく駆使していれば崩せていたであろう場面はいくつもあった。また、攻撃陣が次第にゴール前で足を止めてクロスを待つような態勢を取ることが多くなってしまい、単純に蹴り込むパターンが増えてしまっていった。

 長身選手がゴール前を固めている相手にクロスを入れても、よほどピンポイントで合わない限り空中戦では勝てない。

 一部の選手からは「カウンターを受けるリスクがあったから中からいくのに怖さがあった」という声が聞こえてきたが、全員が自陣深くでゴールを固めている上にスピードのある選手もいなかったギリシャがカウンターで脅威を与える可能性は少なく、後方で守備陣が警戒していれば十分防げたはずだ。

 おそらく、時間がどんどん少なくなっていくなか、ゴールを取らなければいけないという焦りが終盤の“クロス大作戦”を招いてしまったのだろう。日本はギリシャが一番守りやすい形で攻撃を仕掛け続けてしまった。

 香川が「もう少し中央からのトライでリスクを冒す必要があったんじゃないかなというのはすごく終わってから感じた。それでは遅いんだけど」と唇を噛んだように、中への仕掛けが時間の経過とともになくなってしまったのは非常に残念だった。

【了】

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