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しゃべりすぎた日本代表。対戦国密着取材から見えたメディア対応の違い。記者への厳しい環境がサッカー文化の醸成促す

text by 清水英斗 photo by Getty Images

「しゃべりすぎ」「メディアに対応しすぎ」の日本

しゃべりすぎた日本代表。対戦国密着取材から見えたメディア対応の違い。記者への厳しい環境がサッカー文化の醸成促す
分かりやすい部分ばかりが根掘り葉掘り聞かれ、選手それぞれが思っているバラバラな意見が、まるで監督との対立軸であるかのようにメディアに載る【写真:Getty Images】

 ただし、メディアに載るコメントを見ていると、個人的には「しゃべりすぎ」と思える部分がある。

 ギリシャ戦の後には、パワープレーの考え方の違いが、監督と選手の間に生じたズレの象徴であるかのようにクローズアップされたが、正直、ゲーム全体で見れば、パワープレーは終盤の短い時間帯における特殊な戦術に過ぎない。

 しかし、その分かりやすい部分ばかりが根掘り葉掘り聞かれ、選手それぞれが思っているバラバラな意見が、まるで監督との対立軸であるかのようにメディアに載る。

 これは推測だが、選手の親しい友人や家族がそういうメディアを見れば、「ねえ。ザック大丈夫なの?」とメールが届いたりするかもしれない。あるいは大会中にもメディアをチェックしている選手は、バラバラなチーム内の考え方を“間接的に”知ることになる。

 そういう環境は、チーム作りとしてベストとは思えない。だから、「しゃべりすぎ」「メディアに対応しすぎ」と個人的には思うのだ。

 実際、日本代表のインタビューはどれもこれも面白い。対戦相手の印象、レフェリング、チーム状態など、いろいろなことを詳しく話してくれる。

 それに比べると、海外チームの選手からは「相手チームのことは話さない」「戦術的なことは話さない」「チーム内のプライベートなことは話さない」「レフェリングについては話さない」とNGだらけだ。面白くないのは確かだが、大会直前や大会中に限っては、それでもいいのではないかと思う。

 大会中のチームは、もっと集中環境に徹するべき。それは対戦国の合宿地を巡ってきたからこそ実感することだ。

 以前、あるベテランのカメラマンが教えてくれたことだが、1990年代以前、日本代表がW杯に出場できなかった時代には、メディアと選手の距離がとても近く、選手バスに記者が乗り込んで取材をするような環境だったそうだ。

 数こそ少ないが、その時代はまさしく『All for』だったと聞く。W杯初出場を目指し、選手もメディアもファンも、誰もが日本代表の当事者だった。

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