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“因縁”のフランス対ドイツ。フランス人の記憶に残る82年大会の暗い過去。若きレ・ブルーはトラウマ克服なるか

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

「セビリヤでのことは過去のこと。新たな歴史を刻んでほしい」

 82年のW杯でフランスを率いた当事者、イダルゴ元監督も「これはリベンジマッチなどと呼ばれるべきではない。当時は一矢報いたい、という思いもあったが、たとえいまの代表が勝ったとしても、それが当時の一件を清算したことになはならない」とメディアの過剰な報道を抑制している。

  当事者のバティストンも「マキシム・ボシス(最後にPKを外したDF)にとっては、今大会の代表に雪辱を晴らしてもらいたい、という思いがあるだろう。彼はあのあと、辛い人生を送ることになった。

 しかし私にとっては、セビリヤで起きたことは過去のこと。現代表には新たな歴史を刻んでほしい」と、リベンジなどは望んでいない。

 選手たちへのプレッシャーについても心配は無用だ。1982年大会のときに、この世にすでに生を受けていた選手は、エブラとランドローの2人だけで、この悪夢は、実体験として彼らの身に染みていない。

 主将のロリスも「恐れはない。むしろ楽しみだ。自分たちがどこまで遠くへ行けるのか」とチームの声を代弁している。

 実際、1986年のW杯での敗戦以降は、7回対戦して昨年2月の親善試合で敗れた以外はドイツ戦での黒星はない。統計上でも、全25回の対戦でフランスが11勝5分9敗と、勝率では勝っている。

 ただ、W杯での戦績ということになると、ドイツは参加した大会で(西ドイツ時代を含む)、ベスト8に残らなかったのは1938年大会ただ一度きり。

 2002年大会からは毎回ベスト4進出を果たしている上位常連国だけに、準々決勝進出が決まっただけで優勝したかのように喜んでいるフランス側のスタンスは、あくまで「挑戦者」だ。

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