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ドイツを優勝に導いた理想と現実の“バランス”。アルゼンチンを上回った“総合力”

text by 本田千尋 photo by Getty Images

60%の支配率、915本のパス、80%の成功率

ドイツを優勝に導いた理想と現実の“バランス”。アルゼンチンを上回った“総合力”
王座を狙うにふさわしいチームが、黄金の杯を勝ち取った【写真:Getty Images】

 単純にこの試合に限って見てみれば、ドイツ代表とアルゼンチン代表の間には、チームとしての総合力に差があったと言えるだろう。大会を通してメッシは常に先頭に立ってチームを牽引してきたが、仮に10番がいなかったらアルゼンチン代表は前進し続けることができただろうか。

 ドイツ代表は、誰かに牽引役を委ねることなく、またチームとして試行錯誤を繰り返しながら、トーナメントを通してその完成度を増して、頂点へと辿り着いた。対アルゼンチン戦では支配率60%、パス本数915本、成功率80%と、ドイツ代表によって、ポゼッション・スタイルは生き永らえている。死んではいない(編注:アルゼンチンは586本のパス本数、成功率71%)。

 そして準決勝のブラジル代表を相手にしては速攻で急襲したように、それは頑に理想を貫こうとするものでもない。目の前の相手を見据えながら、理想と現実のバランスを柔軟に取っていく。その柔軟性が大会を通じての進化を促したとも言えるのかもしれない。

 王座を狙うにふさわしいチームが、黄金の杯を勝ち取ったのである。そして今大会のドイツ代表がW杯を高く掲げたことは、これからのサッカーの世界にとっても、輝かしいものと言えるのではないだろうか。

【了】

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