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ACL初の女性監督が語る指導者論。28歳の新米監督が乗り越えた困難、そして川崎への感謝

text by 舩木渉 photo by Getty Images

チャン監督が見据える未来。女性指導者へのメッセージ

チャン・ユエンティン
ACL広州恒大戦では名将ルイス・フェリペ・スコラーリ監督とも対面した【写真:Getty Images】

 それでもアジアでの経験は決して無駄にならないとも強調する。

「この6試合、香港では経験できない非常に高いレベルの試合を経験できたことが日々の学びとなりました。普段よりさらに細かい戦術だったり、さらに細かいコンディション調整も求められましたし、選手たちのマネジメントは自分たちにとっていい勉強になりました。今日戦った川崎をはじめ、水原や広州といったクラブと戦えた経験こそが、私たちが香港に帰った時の一つの財産になりますし、アジアの舞台でしか味わえないハイレベルな戦いは、香港サッカーがよりよく発展するための財産になると思っています」

 ACLに出ることは監督としての責任や義務を感じさせてくれるとも語ったチャン監督。「私は注目されることが好きではない」という控えめな28歳は、指導者としても一歩前進できたと感じているようだ。

「将来は日本や他の国で指導してみたいと思っています。香港よりもフットボールのレベルが高いところで学び、経験を積み、良かったものを香港に持ち帰りたい。これが私の目標です」と、アジアの舞台を経験して将来の明確なビジョンを語る。

 ただ「AFC年間最優秀女子監督賞」や「香港リーグ最優秀監督賞」を受賞し、英『BBC』による「世界で影響力のある女性100人」にも選ばれたチャン監督は、女性指導者の難しさを誰よりも深く理解している。

「(女性のコーチが出てくるかは)その土地の文化しだいだと思います。香港では男女平等が進んでいます。それによって女性でも監督になれるチャンスがありました」と、香港ならではの事情を明かした。そのうえで女性指導者が他の国でも活躍するために必要なことも語っている。

「私は常に全力を尽くし、準備をして、自分を信じてきました。たくさんの困難を乗り越えていかなければなりませんが、自分を信じて、あきらめず、挑戦し続ければ、他の国でもチャンスが拓かれてくと思います」

 川崎フロンターレ戦後の記者会見では「日本で指導者を目指している全ての女性の方に伝えたいことは、とにかくあきらめず、自分を信じて、自分が正しいと思ったことをやり続けて欲しいということです。私はやり続ければ自分の夢が叶うと信じてここまで来ました。自分を信じ続けることが成功につながるとお伝えしたいです」と、チャン監督は日本で奮闘する女性指導者たちにメッセージを送っている。

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