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日本代表 7年前

C大阪・杉本健勇、満を持しての日本代表招集。悔しさを起爆剤に。進化続ける心技体

text by 藤江直人 photo by Getty Images

鹿島・昌子が語った杉本の脅威

昌子は長身でフィジカルに長けた植田(右)が杉本(左)相手に苦戦していたことに舌を巻いていた
昌子は長身でフィジカルに長けた植田(右)が杉本(左)相手に苦戦していたことに舌を巻いていた【写真:Getty Images】

 同じ1992年生まれのプラチナ世代で、J1の得点ランキングで2位につける、キャリアハイの14ゴールをあげている杉本のプレッシャーに何度も失点を覚悟した。最たるシーンが前半17分だった。

 ハーフウェイライン付近から左サイドバック・丸橋祐介が出したロングパスに、武器のひとつであるスピードを生かした杉本が抜け出す。ともに代表に選出された植田直通を制して、昌子がマークに当たった。

 左サイドからペナルティーエリア内に侵入した杉本は、次の瞬間、鮮やかな切り返しから右足でボールをもつ。中盤の左サイドでもプレーした、J2を戦った昨シーズンに身につけた十八番の得点パターンだ。

 昌子も右足で踏ん張り、必死に体勢を整える。そのとき、右ひざに限界を超える負荷がかかったのか。危険を察知した昌子は、左足を伸ばしてシュートをブロックすることをとっさに観念した。

「ひざが危なかった。あれでブロックにいったら半月板をやっていて、多分、僕は終わっていました。本当に申し訳ないけど、ソガさん、頼みますという感じで」

 祈りは通じる。杉本の右足から放たれた強烈な一撃は、ソガさんこと38歳の守護神、曽ヶ端準のファインセーブに弾き返される。思わず天を仰いだ「9番」は、コースが甘かったと試合後に自らを責めた。

「ひとつ(昌子を)かわして、本当に5センチ、10センチの差だったと思うんですけど、ほんのちょっとのところの精度というものを、もっともっと上げていかないと」

 杉本のなかで進化を続ける心技体の「技」が、この切り返しに凝縮されていた。ならば「体」は、何度も勝利を収めた空中戦で王者を畏怖させていた。昌子の言葉が杉本の脅威を物語っている。

「競り合いでは基本的にナオ(植田直通)のほうへ行っていて、僕自身がやる機会はあまりなかったんですけど。ただ、ヘディングで競り合うタイミングひとつを取っても、ナオがあそこまで苦戦するのを、僕はほとんど見たことがないので」

 186センチ、79キロの植田に対して、杉本は187センチ、79キロ。前後半で9本を数えたセレッソのコーナーキックでは植田が杉本をマークしたなかで、後半31分には冷や汗をかかされた。

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