フットボールチャンネル

日本代表 7年前

C大阪・杉本健勇、満を持しての日本代表招集。悔しさを起爆剤に。進化続ける心技体

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「ほとんど初めての選手だからといって、気を使っている場合じゃない」

ハリルホジッチ
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

 勝てば6大会連続のワールドカップ出場が決まる、31日のオーストラリア代表との大一番へ。アントラーズ戦で痛感させられた、ゴールを決めるか、決められないかの差は、杉本のなかでさらにスケールアップされた選択肢と化している。

「言葉がちょっと選びづらいですけど、ホンマに生きるか死ぬかというか、天国か地獄か、というくらいの勝負だと思っているので。周囲とのコンビネーションがああだ、こうだと言っている暇もないですし、何よりも自信がなかったら代表を辞退したほうがいいんじゃないかと。

 ワールドカップに行けるか、行かれへんかという戦いに、ほとんど初めての選手だからといって、気を使っている場合じゃない。自分からもしっかり要求したいし、上手くコミュニケーションを取りながら試合に出られるようにアピールしたいし、チャンスがあればゴールを決めたい」

 恵まれたサイズに強さ、テクニック、そしてスピードを同居させる稀有なアタッカーとして、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は2年以上も前から杉本を追跡してきた。

 いわば秘蔵っ子を、満を持して招集した今回の決戦シリーズ。手元に置いて立ち居振る舞いなどを見ていくなかで、杉本のなかに脈打つ強い心が指揮官に伝われば、今後へ向けた可能性はさらに広がる。

 2010年のワールドアップ・南アフリカ大会でベスト16に進出した岡田ジャパンで、コーチを務めた大熊チーム統括部長は「彼には代表に入ってほしかった」と、目を細めながら杉本へエールを送る。

「選ばれた選手たちの責任感や独特の空気、さらには相手の迫力や執念を、テレビを通して見るのと間近で見るのとは全然違うし、ましてや実際にプレーできるとなるとさらに違ってくる。代表でいろいろなものを吸収して、結果も出して、さらに力をつけて自分の夢というものに向き合っていってほしい」

 日本中が注目するオーストラリア戦。そして、敵地に舞台を変えたサウジアラビア戦。杉本を待つ未知なる戦いは、心技体が進化するスピードをさらに加速させ、周囲に対してさらに大きな影響力を与えるオーラをも身にまとわせる究極の触媒となる。

(取材・文:藤江直人)

【了】

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top