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強豪国に勝つために、日本が目指すべきスタイル。「風間理論」で今こそ考えたいポゼッション

11月の欧州遠征でブラジル、ベルギーと対戦した日本代表。ベルギーには僅差での敗北となったが、ブラジル戦では大きな力の差を見せつけられた。強豪国を倒すために日本が目指すべきスタイルとはなんだろうか。風間八宏監督と共に『技術解体新書』(カンゼン)を著した西部謙司氏が、日本を強くするためのヒントとして「風間理論」を読み解く。(取材・文:西部謙司)

text by 西部謙司 photo by Getty Images

強豪国に勝つために。日本が描くべきシナリオとは

風間八宏
現在は名古屋グランパスを率いている風間八宏監督【写真:Getty Images】

 フランスのリールで行われたブラジルとの親善試合、日本は1-3で敗れた。力の差がある相手なので負けは仕方ないが、早々にリードを許したためにカウンターを狙いたいはずの日本が、逆にブラジルのカウンターアタックを食らう展開になってしまった。

 ヨーロッパでのブラジル戦といえば、2012年にもポーランドで対戦している。ザッケローニ監督下の日本は0-4と大敗だった。そのときもブラジルのカウンターアタックをまともに食らっていた。ただ、あのときの日本は今回よりもずっと攻め込めていた。ボールを支配して攻めていたからカウンターもされていたわけだ。

 守備から入ろうが攻撃的に出ようが、結局ブラジルに勝つのは難しい。仮に10試合やって日本が勝てるのは1回だとすると、それを2回にするのが現状でやれることである。では、現状を離れて将来的に日本がブラジルやドイツなどの強豪国に勝つとすると、それはどんな試合になるのだろう。どうすれば強豪国に勝てるのか。

「五分五分にボールを持てても勝てません」

 風間八宏監督(名古屋グランパス)は、ポゼッションが五分では勝てないと言う。なぜなら、ゴール前の決定力や崩す能力において相手が上回っているからだ。逆に自陣ゴール前で守りきる力についても同じ。つまり、チャンスの数(あるいはピンチの数)が同じでは強豪国に勝てない。攻防の比率が五分になったぐらいでは勝率に影響は出ないだろうというわけだ。

 2012年のブラジル戦、日本はボールを敵陣まで運ぶことはできていた。ちなみに世界トップクラスを相手にして、五分以上にボールを支配できたのは日本サッカー史において画期的な出来事だったといえる。ただ、この試合でプレーしていた遠藤保仁によると、

「そこから崩す“絵”がまったく浮かんでこなかった」

 相手ゴールに近づくことはできたが、そこからシュートへ至る道筋が見えていなかったという。日本はブラジルを相手に五分以上にボールを支配することはできたが、崩すことも点をとることもできず、逆に最も警戒すべきカウンターアタックから失点を重ねた。まさにポゼッションが五分では勝てない試合だった。

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