フットボールチャンネル

強豪国に勝つために、日本が目指すべきスタイル。「風間理論」で今こそ考えたいポゼッション

text by 西部謙司 photo by Getty Images

ボールを運ぶ能力は強豪国に大きく見劣りしない

ヴァイッド・ハリルホジッチ
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

 風間監督が「70~80%はボールを持つ必要がある」と言っているのは、向き合うべき課題がどちらかは、すでに答えが出ていると考えているからではないかと思う。

 日本が明白に足りないのは敵陣と自陣、両方のゴール前での力だが、その中間については強豪国に大きく見劣りしていない。少なくともボールを運ぶ能力に関しては、すでに五分に近いレベルまで到達している。

 現在のハリルホジッチ監督のチームはポゼッションよりも守備に重きを置いているのでそうでもないが、それ用のメンバー構成に変えればポゼッションを五分に持っていくのはそんなに難しくないはずだ。

 風間監督が言うように「五分」では勝てないので、ボールを運べる能力は現状で強豪国を倒す力にはならない。しかし、運べる能力は唯一、強豪に大きく見劣りしない部分であり、つまり日本の長所といえる。

 ボールを運ぶ能力という長所で勝負しているチームにメキシコがある。

 メキシコはボール支配力に関して強豪国に負けない力を持っている。70~80%まではいかないにしても五分以上には渡り合えるチームだ。メキシコが現在のようになったのは1980年代以降、ワールドカップでポゼッションの優位性がはっきりしてきたのは90年代からだ。94年米国ワールドカップから6大会連続で出場していて、すべてグループリーグを通過し、すべてベスト16で止まっている。ベスト8の壁が厚い。

 94年はこの大会でベスト4入りしたブルガリアに1-1(PK戦で敗退)、98年はドイツに1-2、02年はライバルの米国に0-2、06年と10年はアルゼンチンに敗れ、14年はオランダに競り負けた。ラウンド16は現実的にドイツ、アルゼンチン、オランダといった強豪国に当たる。

 五分以上にボールを持てるメキシコがそこを突破できないのは「五分五分では勝てない」ということなのだろう。ただ、毎回グループリーグは突破していて、ベスト8も紙一重のところにいる。

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top