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ハリル悲痛。欧州で静かに進んだ解任劇…闇に葬られた「リエージュの三月革命」

text by 編集部 photo by Getty Images

ヴァイッド・ハリルホジッチ
ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督が記者会見を行った【写真:Getty Images】

 革命は静かに、そして確実に進行していた。

 のちに日本代表監督を解任されるヴァイッド・ハリルホジッチ氏が、その気配を初めて感じ取ったのは3月24日の早朝だった。

 前日の午後、ベルギーのリエージュでマリ代表との親善試合を終えたハリルホジッチ監督(当時)は、その足でフランスの首都パリへ移動し、フランス代表対コロンビア代表の試合を視察した。

 日本代表がロシアワールドカップのグループリーグ初戦で対戦する国が、その大会の優勝候補と目されるフランスに逆転勝ちを収める姿を目にし、コロンビアの強さをひしひしと感じてリエージュに戻った。

 宿舎に戻ったのは「午前4時か5時ころ」とハリルホジッチ氏。その時、「西野(朗)さんが何か言おうとしていた」という。内容は「1人の選手があまりいい状態ではない」ということだった。

 それを特段大きな問題だと捉えなかったボスニア人指揮官は「そのことはわかっています。後で解決できますから」と答えた。だが、同月27日のウクライナ戦で敗北を喫し、その11日後の4月7日にパリで日本サッカー協会の田嶋幸三会長から解任を伝えられた。

 顔の見えない誰かが始めた革命は、成功に終わったかのように見える。

 田嶋会長はハリルホジッチ氏本人にも、記者会見の席でも「コミュニケーションの問題」を解任理由に挙げた。だが、経験豊富な指揮官は3年間かけて地道に積み上げてきた「コミュニケーション」の結果、選手たちとの関係が良好である自負と、自らの仕事への誇りがあった。

「3年前から誰とも問題はなく、特に選手との問題はありませんでした。海外組だろうと国内組だろうと、常にコンスタントに選手たちと連絡を取り合っていました。何度海外組の選手と電話で話したことでしょう。国内組もそうです」

 どこでどんな問題が起きていたのか。ハリルホジッチ氏は「不満を漏らしているのは2名」というところまで把握できている。ただ「私の方には15人ほどが『感謝している』とメッセージを送ってきている」とも。

「本当だったら会長が事前に『こういう問題が起こっている、どうするんだハリル』と言ってくれればよかった。西野さんも事前にそういったことに警笛を鳴らすなり、情報をくれればよかったと思います」

「解雇に関しては問題だとは思わないんです。何か原因があったら、それは何なのか(田嶋)会長が監督に聞いてきてほしかった。会長の決断はもちろん正しいですし、今の現状をすごくショックに思っているのは、前もって何も教えてくれなかったことです。会長はパリにいらしてくれましたが、突然の解雇だったんです。コミュニケーションと信頼関係が薄れているのがどこなのか、わからないんです」

 そんな悲痛な訴えもむなしく、田嶋会長や西野監督(当時技術委員長)がどのような問題を把握し、監督解任という決断に至ったのか、その経緯は未だ明らかになっていない。「コミュニケーションの問題」を最大の解任理由に挙げてはいるが、ハリルホジッチ氏はJFA内に自らのオフィスを設けて定期的に出勤しており、何か問題が起きれば直接対話するチャンスはいくらでもあったはずだ。

 結果的に「コミュニケーションの問題」とはそもそも何だったのだろうか。そんな疑問を抱いても、時すでに遅し。もう前に進むしかない。だが、ハリルホジッチ氏が求める真相は未だ闇の中に隠されたままだ。

【了】

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